人間のもつ差別という醜さを示した作品。しかし古さは隠せない。
★★★☆☆
はっきりいって、画風も「ヒゲとボイン」ですし、無性人間の発想もいいかげんで、手抜きっぽいです。かつ差別や暴力、残虐、セックスシーンなど現在では逆にかけないような作品だと思います.性差の曖昧な人を人間ではないから殺していいなんて、今書いたら裁判で訴えられるでしょう。巨匠、手塚治虫の過去の作品だから日の目を見られるのだと思います.両性具有や半陰陽、性同一性障害などいわゆるユニセックスな人々は現実におり、性差がこの本のテーマだとは思いません.何でもいいんです、差別する理由は。とにかく差別する理由を付け、虐待し、奴隷として扱う。これは人間だけでなく、あらゆる生物が持つ本能だと思います.戦争や差別の愚かさを強調して書くことにより、そのむなしさ、悲しさを表現したかったのだと思いました.「火の鳥」や「ブッダ」などの名作と比べても仕方ない訳ですし、今はもっと画力もストーリーもしっかりした作品が多数作られており、インパクトという意味でも今ひとつの作品だと思います.
「性」という問題に関する仮説
★★★★☆
人間社会、いや生物界に「性」というシステムがなければどうなるだろうか?
まず考えられることとして、争いごとは大幅に少なくなるのではないだろうか?
人間達の気持ちが、少なくとも25%くらいは奇麗になるのではないだろうか。
では進化という視点で見た場合どうだろう?
「性」というシステムなしに人間を含むほ乳類は
ここまで進化を遂げることが出来たであろうか?
門外漢ではあるが、答えは「NO」ではないかと思う。
自分の遺伝子を残したいという、
なぜだか原則として生き物に植え付けられている欲望が、
知恵を生み、進化を促したことは疑いようがない事実であろう。
何か間違って「性」がなく、
現状と同等レベルに発展した人間社会があったとしたら、
文化面でそれは現状とは全然違った色合いを持つものになっているだろう。
対外の文化に色と艶をそえているのは「性」という要素であるからだ。
生き抜くことが困難なこの世の中で、
くしくも「性」がその原動力になっていることも少なくないだろう。
また「性」が人間の悩みの少なからぬ原因の一つであることも事実である。
中学生の男子の悩みと興味の85%位はそれにまつわっている気がする。
「性」について考えるということは、
すなわち堂々巡りである。
論点と論点同士の相互関係が多すぎて、
方程式が無限になるからだ。
解はあるのだろうが、きっと誰もわからない。
この作品で手塚先生はそれに対して一つの仮説を立てている。
そんな風に読むと面白いと思う。
わざわざ高い実業之日本社版を買う理由はある
★★★★★
「人間ども集まれ!」は手塚治虫が大人向けナンセンスに挑んだ作品だ。(と言われている)
学校の図書館にあるような手塚漫画とは、絵の作りも話の展開も違う。
週刊誌の風刺漫画にあるような絵柄と、セックスやらなんやらを容赦なく扱うストーリー。
一般的な手塚マンガのイメージで読んではいけない。
だが、こういうのも描けるのが手塚治虫なのだ。
この本(実業之日本社版)ではない「人間ども集まれ」も売られているが、私は実業之日本社版をおすすめする。
その理由は、単行本収録に当たって書き直したものと雑誌掲載版が両方とも載っているからだ。
さらに巻末には修正が入った理由や、おなじように構成を変えた手塚治虫のマンガが紹介されている。
ここを読めば手塚治虫のマンガにはことごとく修正が入っている理由が分かるだろう。
てづか先生!
★★★★★
手塚治虫の作品の中でも、もっとも好きです。
手塚のいいところが凝縮していますね。
まだ、「クローン」という概念が一般に広まる前の作品なんでしょうね。
クローンがあったら、そもそも、この物語は成立しません。
そんなところが、未来のようでもあり、昔のような感じもして、独特な世界観です。
人間を見つめる目の確かさは、さすが手塚治虫!
こんな分厚い本なのに
★★★★★
まったく漫画って言うのは、読めてしまうものだ。
太平天国を設立させられ、子供を作らされ。まったく駄目な主人公だが、戦争を体験した人間の描く明るい戦争か、もしくはまったくそれとは関係ないのだろうか。人間性の無い人間、現実味の無い国家、真実のかけらも無い戦争。これは皮肉なのか、あるいは、ジョークか?