インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

人間昆虫記 (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 秋田書店
Amazon.co.jpで確認
「この社会で敗北者にならないこと。生き残ること。勝利すること。」 ★★★★★
私は手塚ファンとしては比較的ファン歴が浅い方だが,この作品には強い思い入れがある。
MW,奇子等の「黒手塚」(個人的にはあまり好きではない呼称だが)と呼ばれるジャンルをある程度読み込み,成人向け作品も有名どころは全て読破し,恐れ多くも「手塚の大人向け作品はもういいかな…」と思い始めていた矢先にこの作品に出会った。衝撃だった。
主人公:十村十枝子(臼場かげり)は,一見美貌と才能に恵まれ,不動の地位と名声を獲得した「幸福な」女性だ。(今時の言葉で言うと「勝ち組」といったところか。)誰もが彼女を褒めたたえ,夢中になり,自分の全てを投げうって奉仕した挙げ句,ボロボロになって破滅してゆく。
しかし,彼女自身の内面は驚く程空虚だ。十枝子には,実は「創作」の才などまるで無い。彼女が生まれ持った能力と言えば,他人の才能を模倣し,さも自分の能力のように振る舞って,ツギハギの自我を形成する事,ただそれだけ。
しかし,それは「計算」によって行われているというより,「本能」に近い。彼女自身は何か明確な野望がある訳でも,深遠な思想がある訳でもない。彼女はただ必死なだけなのだ。「敗北者」にならずに,この世界で生き残る為に。そしてそれは恐らく,現代社会を突き動かしている歪んだ原動力でもある。−−−だからこそ,周囲は彼女の虚飾に気づけない。むしろ,彼女を取り巻く世界そのものが,虚飾というべきなのか…。
これは,現代社会に広く流布している「自立した現代女性像」に投げかけた疑問符でもあり,「クリエイター」「アーティスト」等ともてはやされては泡の用に使い捨てられてゆく「創作者」達に対する痛烈な皮肉でもある。
私は同じ女性として,主人公に強い共感を覚えた。寂寞のラストは圧巻。
こんな作品知らなかった ★★★★☆
手塚作品にこんなのがあったとは知りませんでした。女の壮絶なサガを描いているのですが、これが後の作品「火の鳥」へ通ずるのだそうです。人間の本質に迫る一冊はいかがですか?
漫画家No1 ★★★★★
この人は他の漫画家とは一線を画している。
量も質もすばらしい。アナーキー(あらゆる作品が生み出された当時を考えれば)な所も大好きだ。
手塚治虫の作品はほぼハズレなしなのでいいモノをあげればキリがない。これは手塚治虫中編の中では私的ベスト5に入ります。
主人公の切なさが伝わってくるいい作品だと思います。
何か人生ってちっぽけで切なくて空しいモンだな~。

他、MW、奇子、シュマリ辺りが中編ではかなりおもしろい。

火の鳥、ブラックジャック、ブッタ、ばるぼら、IL、地球を呑む、はるかなる星、アポロの歌、空気の底、クレーター、鉄の旋律、時計仕掛けのリンゴ、アラバスター・・・・・ホントにあげるとキリがない。

残酷な女心を斬る巨匠手塚の野心作! ★★★☆☆
1970、71年にプレイコミックに連載された、残酷な女の心理を描く巨匠手塚治虫の野心作の文庫版。その昆虫にも似たメタモルフォーゼで、他人を利用しあらゆる分野で成功していくヒロイン十村十枝子の残酷でしたたかな生き方、むなしさを描いている。手塚大ファンのわたしだが、この作品の読後感は満足にはほど遠いものがあった。もちろん絵は素晴らしい。キャラクターも十分魅力がある。しかし、女ヒロイン十枝子の残酷さ、裏切りがあまりに無機的で、そしてまた彼女の行動を裏付ける動機が説明されていなかったのも問題だった。とはいえ、手塚が70年代初頭という変革の時代の波にあって、いままでの勧善懲悪的キャラクターから離れた異色キャラクターを描いたというところに読む価値は十分であるのだが。