地方自治体の監査制度の検討に有意義
★★★★☆
本書の著者である石原俊彦氏は、関西学院大学専門職大学院の教授であるとともに、日本人初の英国勅許公共財務会計士(CPFA)でもあるらしい。石原教授は2010年1月、地方制度調査会(地制調)に代わる組織として立ち上げられた地方行財政検討会議(議長:原口一博総務大臣)の第二分科会メンバーであり、この分科会で現在、論議されているのが「地方自治体の監査制度」である。石原教授の「自治体監査」に関する考え方などについて、直近では『地方財務』10年7月号で「地方自治法の改正と監査制度の抜本改革」と題した論攷で示されているが、かなり乱暴に論旨を纏めると、現行の監査委員監査制度は有効に機能しておらず、英国型の地方自治体監査制度に学ぶべきである、ということであろうか。
当書では、この英国における自治体監査を含め、内部統制等のガバナンス・フレームワークやガイダンス・ノートなど、英国勅許公共財務会計協会(CIPFA)や全英地方自治体経営者協会(SOLACE)の価値ある報告書が訳出されている。特に、リスク・マネジメントの考え方などは有益であろう。ただ、ここで問題としたいのは、前述の論考と関連して石原教授は、我が国の〈委員監査〉の機能を分解し、“純然たる”外部監査機関として、英国式の「地方自治体監査委員会(Audit Commission)」制度の導入を企図していることだ。この組織に関して同教授は、サッチャー政権で設置され、ブレア政権にも継承されているから良い制度だ、といった見方もしているが、もう少し時間を掛けた議論が必要ではないか、と考える。
ガバナンスは監査から
★★★★★
この本は英国の内部監査の実務規範が翻訳されており、読者にとって内部監査のイメージが沸きやすくなっております。
地方自治体での監査、法令遵守、内部統制などの業務に関わっておられる方、またそういった方面に興味のある方に推薦します。
できれば、「CIPFA―英国勅許公共財務会計協会」 (関西学院大学研究叢書)とあわせてお読みになることをお勧めします。
自治体マネジメント関係者 必読
★★★★★
英国の自治体のガバナンスに関する基本的な文書が読みやすく翻訳されています。
「ガバナンス」とは何か、それを構成する要素は何かということは、実ははっきり知っていないと、監査において、その事務の何が問題なのかが
わかりません。
この本では、そうしたコンピュータでいうところのOS(基本ソフト)の部分を提供してくれます。
また、内部監査の実務規範も紹介されています。これは、監査が兼ね備えるべき必要条件が記載されています。公認内部監査人の国際基準との
類似性も多く、公的分野の監査基準の国際的なスタンダードともいえます。
夏休みなどの余裕のあるときに、自分たちの自治体や監査のあり方をふり返る際に有益な示唆が確実に得られると思います。
首長、議員、財政、監査関係者など自治体マネジメントに関わる人には、必読書です。