最初に取り上げられるのは、大韓航空機撃墜事件で悪名をはせた旧ソ連の攻撃機スホーイ15。ここで豊富なイラスト図解で語られるトピックスは、なぜ超音速機の主翼デザインがデルタ型になっていったか?という問題。次に、超音速機にはなぜ双発タイプのパッケージが増えたかということについて、それはジェットエンジンの推進力は流入量と比例するが、それは空気の取り入れ口(エアーインテーク)の面積の大きさ(2乗)とジェットエンジンに体積(3乗)に比例すると単純化でき、それならば、大型1発よりも小型2発の方が効率がいい、ということなになるから。そしてモノのカタチは断面の集積だという設計のイロハや、全ての部品ひとつひとつに設計図というものが存在するという話、空間を移動する際には重心からのX軸、Y軸、Z軸の運動によって説明できるなどの話も続く。
高校の物理の先生とかやらせたら、生徒は喜ぶだろうな、と思った。
ただしクルマ以外のモノも"延長感覚"で語っているから、ボロも見えてくる。ダメだな、と思ったのがB&Oのステレオを褒めているところ。福野さんは、基本的に音楽をあまり聴いていないんじゃないかと思った。ピュアとまでいかなくても、少しでもオーディオに興味があり、聴き比べをしたことがあれば、B&Oは褒められない。デザインはいいけどね。下巻の『乙』では音もイイみたいなこと書いてしまっているし、そこだけちょっとガッカリ。でも、まあライター家業なら、どんな注文も受けなきゃならないし、しょうがない部分はあると思うけど。