趣旨は,「ゆとり教育」は失策であり(「ゆるみ」),学力上位層に比較して,下層家庭の学力下位層の学力が低迷(下落)していることが統計的に裏付けられますよ,というもの。ブルデュー再生産論の教育版。本書題名の「階層化」とは,競争社会化(業績主義化)している日本で「負け組」である下層家庭の子女が,学校的業績主義(成績序列化)から落ちこぼれているだけでなく,勉強を放棄することで競争裡から自ら降りている(「意欲格差」が拡大している)というわけ。近年の若年層に特徴づけられた「根拠なき自信」が統計的に拾えるというもの。酷い言い方をすると,バカはどこまでいってもバカということなのかな(誤解回避のために言っとくと,ここで言う「バカ」とは,プライドの矛先をまったく見当違いの方向に向けている層という意味。私もバカの一種ですから・・・)。
私は「ゆとり教育」という珍策を政府が発表したとき,“とうとう日本政府は階級社会を輸入し始めたか?!”と観想した。この意味では,私の山勘を実証してくれているのが本書だとも言える。「カイ二乗」とか「重回帰分析」とか統計用語なんてむわったく分からない僕でも,著者の主張を理解するうえでは大きな障害にはなりませんでした。ただ,「マニュアル層」「職業アスピレーション」なんて用語は,せっかく索引まで作ってるんだから,どこかで解説しておいてください。「アスピレーション」はYahoo!とgooの国語辞典では検索できなかった。むやみに「カタカナ」を日本語として強制流通させようとしないで欲しかったな・・・。(1309字)