書いたもの勝ち、の後に続くのは
★★★☆☆
オフィスのランチタイムをひたすら「意識の流れ」風に記録すると、なんと小説ができあがる。高橋源一郎先生が言ってた「ものごとがちがうようにみえてくるのを待つ」っていうのはこれのことね。
誰かが辞める時とかに回ってくるカードにメッセージを書く時、私も同じようなこと考えたことあるよ!えらい人の隣に書くの、なんとなく遠慮したり。凡庸な日常を他に類をみない神経症的な細やかさで描いているところ、そこは間違いなく「買える」。ただその細やかさが賢しさに通じて、賢しさを取り除くと何が残るのか、と問いたくなりもする。「めちゃわかる!それ」という超日常ネタ、超形而下ネタにビシバシとスポットライトを当てる手法は、日本の漫才でよく使われていますね。著者は昔、投資銀行で働くバリバリのビジネスマンだったらしいけれど、そのバリバリの中で哲学してしまったからこんな小説が生まれたのでは?とこの小説がそもそもなぜ生まれたかという背景の方に私は興味がわいてしまう。
小説ガイドの常連だけあって読む価値は絶対あるのだけれど、同じ著者の他のものを読みたいと思わなかったのは、賢しさがアダになっているからだと思う。こういう書いたもの勝ちの小説を書いちゃった小説家というのは次回作からが勝負、になってしまうのかな。
耳栓をするたびに
★★★★★
飛行機に乗るたびにアテンダントに耳栓を要求し、集中して仕事するぞって時に耳栓をする。そんな習慣がつきました。多分、読んだ人はいろいろな意味で日常生活に強い影響を受けるでしょう。ものごとは、こんな風に観察できるんだと毎日が楽しくなります。
そういえば、ひさしぶりにベイカー流に歯でも磨くかな?
癒し本の傑作です
★★★★★
これは「癒し」本の傑作です!主人公がエレベーターを降りて買い物に行き、また戻ってくる数十分の間にに考えたことをページ半分もある注釈付き!で小説化。おもに考えることは、エレベーターの階段のしくみであるとか、靴の紐の切れ具合だとか、ペン先のことだとか、牛乳パックのことだとか、いちばん音の聞こえない耳栓のことなどなどですが、そのマニアックさかげんといったら!!でもなぜかそれが返って心地よい。文具マニアの方にもお勧めです!
私って注意力散漫?
★★★★☆
言ってしまえば、中二階のオフィスに戻るだけの話。だけど、そのわずかの時間にどれほどのものが見えて、どれだけのものが考えられるのか…この主人公ほど色々とは思わないけれど…私が人並みはずれてぼぉっとしているとは思いたくはないわ。