許光俊をまともに評価できている稀有な人
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許氏は賛否両論激しいが、何で激しいのかわからん。
プロの評論家は、特にコメントしていないので困っていた。アマチュアはアンチは感情的なことばっかり言うつまんない人が多くて困った。信者みたいな人は頑張って擁護するんだけど台所を大所と書いたりするので、困った。
宮下氏はもっとも普通に評価している。常識人はこうじゃなくちゃいけない。
自分は絵画はわからないのだけど、それだけで、ただそれだけで十二分な価値のある一冊。
音楽学者にこそ読んでもらいたい音楽比批評の新しい歴史を開く音楽哲学
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はじめは許光俊や鈴木淳史らの二番煎じかと思って眉に唾付けながら読んでいました。でも、彼等の、経験に裏付けられながらも結局のところ「個人の趣味」に落ち着いてしまう「お茶の間」批評、「盆栽」批評の枠をたいして出ないものとは、似て非なるものであることが、いや似ても似つかないものであることが分かってきました。「ものがたり」を喪失し「ものがたり」を模索する20世紀後半の芸術諸分野共通の課題を巨視的に理解していなければとてものことこのような本は書けません。自己批判的語り口や偽悪的扮装にだまされてはいけません。それさえもがこの本の企みなのだと思います。この本自体がこの本自体の存在を相対化することで「ものがたり」の解体を身を以てディスプレイしているのです。これは音楽書の歴史(私は無数の音楽書を読んできました)を通じて特筆すべき事件だと言わざるを得ません。オペラについての一章はそれ自体が仕掛けに満ちているけれど、これほど密度の高いオペラ論を未だかつて読んだことがありません。熟読すればするほど、筆者の問題意識の深さ、思索の密度の濃密さに圧倒されます。私の読書経験の中でも希有の事態で、これに匹敵するのは同じ著者の美術論『逸脱する絵画』だけです。いやあ、すごい才能が現れたものですね。
アートと戯れるための入門書
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「逸脱する絵画」の続編。今度は音楽だ。エッセイと言うには緻密に構成され、評論と言うには臆面もなく“私”観が前面に押し出されている。大胆な斬り口で読み解き、巧みな話術で展開する。実感に基づく解説は腑に落ち、ひざを打つこと数知れず。ややもすれば小難しい言葉の数々も著者にかかれば言葉遊びよろしくリズミカルに踊りだす。音楽や絵画に関するリテラシーを問わずアートと戯れることができるシリーズ。次回作が今から楽しみだ。
痛烈な皮肉に彩られた音楽史
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『逸脱する絵画』を楽しめた人には本書もまた、またとない贈り物となるのではないでしょうか?音楽について全くの音痴である(笑)私が読んでもとても面白かったし、知的満足感は『逸脱』以上だと思いました。序曲みたいな鼎談も面白かった。偽装(擬装だったかな?)されたCD紹介はとてもマニアックだったけど、音楽を聴いて確認する必要は必ずしもないのではないでしょうか?紹介された音楽についても知っている必要はないと思います。私もほとんど知らなかったし(爆笑)。それでもそこに書かれている内容はとても刺激的だったし、「批評」のうさんくささを嫌と言うほど教えてくれました。結果として「自分の耳で聴いてみろ」と筆者は言いたかったのではないでしょうか?最後に置かれた文献リストは熟読してもらいたいです。書き手の言いたいことがおぼろげに見えてくるはず。