21世紀の生成言語学を目指す人のための優れた書
★★★★★
私が生成文法演習のテキストとして選ぶとしたら、迷わずこれを選ぶ。理由は、第一に、理論的背景、重要となる基本的な考え方が詳しく説明されているから、第二に、ミニマリストだとか、GBだとか、生成文法が辿っている理論史のようなものにむしろこだわらずに、「統語論的分析の手法」を学べ、「データ」中心の議論を身に付ける、という記述研究の大切さを教えてくれるからであり、第三に、説明的妥当性に向けて生成文法は何を必要とするのかをじっくりとそのヴォリュームある内容で訓練できるからである。「生成文法」って何じゃらホイ?と飛びつけるようなある種の軟派な入門書ではなく、相当に骨のある、読む者に相当の努力と忍耐を必要とする書物であるが、この本をじっくりと読めば(練習問題も極めて豊富であり、それらについても挑戦されることを強力にお薦めしたい)、大げさな言い方をすれば、生成文法によって開かれた地平で日本人は何ができるのかということがおぼろげながらわかるはずである。テクニカルな面をしっかりと勉強するならば、岩波書店から出版されている言語の科学シリーズの『生成文法』を通読されることをお薦めする。