英国のシステムの中にも参考にすべき点はある
★★★★☆
英国で暮らしていた頃,NHSの病院は無料だが待ち時間が長いと聞いていた.
幸い,この著者と同じでお世話になることは無かったが,その悪評は英国人も
諦めの様子であった.
英国は,VAT(付加価値税)が17.5%という高率が良く言われるが,食料品には
課税されない.スーパーに冷凍ケーキが多量に売られているのは,課税される
ケーキではなく,解凍という調理を伴う冷凍食品とするということが
象徴的な例であるが,要は生活していくために必要な物資に対しては非課税が
徹底されている.そのことが本書ではわかり易く説明されている.
著者の友人らの実際の家庭の家計を紹介して,その収支から英国社会の実像を
炙り出している.ただ,家計の収支だけではなく,その享受しているハピネスに
ついては,その行間から感じられるのも事実である.
決して,英国は理想の国ではなく,その社会システムも豊かな金融の力により
成り立っているのは事実である.従って,本書が発刊された頃のリーマンショック
以降の動きについては,どうなっているのか知りたいところである.
豊かである理由
★★★★☆
イギリスの医療費が無料ということは他の本で知ったが、本書ではもう少し詳しく実態を解説してくれる。それによると、公的機関のNHSのほうの実態が多少様変わりし、医師のほうに変化が見られる。歯科医療は一部有料だったりと、無料とはいかない場合もある(何を無料にするか、ということで面白い例が挙げられているのだが、それを見るとなんでも合理的とはいかないようだ)。しかもこのNHSとプライベートの2本立てで診療が行われている。さらにNHSはGPと専門医の「二段構え」で、このへん多少面倒臭くなる場合が生じるようだ。本書の中心となるのはこれら医療についてだ。
ほかに、具体的にとある家庭の年俸が公開され、そこから所得税や保険料など差し引かれた分が割り出されているので分かりやすい。(ついでに日本の生活保護についても調べてある。が、細かい条件などについては書かれていないので、額面通りには受け止められない気がする)またイギリスの失業手当について(「ドール・イズ・ロックンロール」なる言葉も登場)、法律で定められている最低賃金、イギリスの大学の学費や、オックスブリッジに入学する前の目に見えない壁、高齢者のケアホームなど、普段は知り得ない情報があれこれ記述されている。
最後は国がなんとかしてくれるという安心感がある?!
★★★★☆
イギリスの医療は本当に無料と言えるのか。
17.5%もの消費税がそれを支えているとして、トータルでイギリスでの生活は楽なのか苦しいのか。
イギリスの社会保障政策(特に医療制度)のあらましがわかる。
即日退院が原則の出産。
男女同一病棟の泌尿器科。
何週間も待たされる専門医による診療。
高額なプライベート医療も、格段に質が高いわけではない。
イギリスのNHSには制度疲労の面も少ないが、一方で日本は、国民健康保険料として所得の8%を払い込み、受診時にも3割負担し、年金暮らしになった後も医療費を負担することになる。
『要は、「働けなくなったり、病気になったりしても、最後は国が何とかしてくれる」という信頼があるか否かである』(p193)
う〜む。
知ってるようで知らないイギリスの福祉
★★★★★
映画『シッコ』は劇場とテレビでみたし、『ゆりかごから墓場まで』は言葉としては知っていたが、その内実、歴史的背景は、はっきり言ってこの本を読むまで知らなかった。そして、著者自身の視点から返す刀で日本の福祉制度の問題点、方向性への示唆もあり、ためになった。
ほとんど社会主義と資本主義が拮抗していますな。
★★★★☆
医療費無料の制度は、第二次大戦以降続いているようですが、当時は今に比べたら大して医療にお金がかからなかったから国の負担もそう大きくなかったのですが、医療費増大傾向の現代において、かなり厳しい状況になっているようですが、如何せん無料の味を占めてしまった国民に対して、改革することは難しいようです。あのサッチャーさんでさえも、どうにもこうにも改革できなかったようです。
ほとんど社会主義と資本主義が拮抗していますな。
自分が思うに、長期的に見て、NHSは破綻する可能性が高いと推測します。NHSは戦時中の緊急措置では機能すると思いますが、平時においては、その業界の衰退を意味しているのではないでしょうか。