良いです
★★★★★
鷺沼が料理を食べて、涙する所は読んでいるこちらも一緒に涙してしまいました。
食べた料理を、美味しいと思えた。
鷺沼の凍った心も、温かい料理と一緒に、溶かしてくれました。
幸せになって良かったです。
どこをつついてもよくできた作品のフィナーレ
★★★★★
一言、最高の三部作フィナーレ。
これほどどきどきしながらページを繰ったBLはない。
このBLがすごい!の第一位になったのも頷ける。素直に称賛。
生きる目的がなんだったのか、
食べることは自分にとって何だったのか、
自分が今欲しているものは何なのか、
今までのみじめだった自分を振り返り、そしてただ一つ、久我にそばにいて欲しいという気持ちだけが残る。
そこまでたどりついた理人に、ただただこれから久我と普通の幸せを感じて言って欲しいと思った。
架空の話なのにとても身近に感じ、がつんとのめりこめた作品だった。
最後の最後、レストランの新しいオーナーとなった人物が実は今までの常連さんの一人であったことがわかり、一巻で久我と理人が客の優先順位についてもめたときの常連さんだと思いだしたときには、構成の素晴らしさに脱帽。
どこからどこまでもよくできた作品。
感動は色褪せる事なく。
★★★★★
シリーズ番外発売を目前に3冊再読しました。久しぶりに清々しい気分になれて、
旅立ちと出会いの季節にもピッタリです。(3冊まとめての感想になります)
レストラン「ル・ジャルダン・デ・レーヴ」再建を舞台に反発しあう理人と久我。
でも内心は怖れと同時に傍若無人な態度の裏の温かさに気付き、一方は硝子の瞳をした
冷たい顔を崩し、心から笑って欲しいと願う。二人のぶつかる個性に魅了されました。
恋愛要素と別にある種のゲーム的高揚感もあります。
理人は復讐の為に「ゴルド」を掌中にしたいと望み、ずっと見守ってきた叶も然り。
理人の生い立ちと背景。鎧で守ってきた矜持。希望。その真実と喪失。
2巻に濡れ場がありますが泣きながら色っぽいシーンを読んだのは初めてでした。
3巻では久我の修行時代が描かれ、彼の血と肉がこうして成したのか理解できます。
久我の己の道を突き進む姿が野生動物の強かさに似て、気高く…そして怖い。
「レーヴ」に勤める同士たちの立ち位置にブレがなく造詣描写が深いです。
名前がない会話文でも誰の言葉か把握できるほど確立しているのが証でしょう。
それぞれが複雑な思惑を抱え、最終巻はヤガミ再建とゴルド買収を背景に山場を迎える。
叶との微妙な関係、理人の幸せを願う久我は?そして疲弊しきった理人の選ぶ道は…?
緊迫感漂う展開で目が離せません。また、退いた「レーヴ」への理人の万感を込めた想い。
たった一年で自分の感覚と価値観が変わり脆さに気付き、その思い出と共にかつての
仲間が作った料理を「おいしい」と心から感謝し食べる場面では、胸に熱いものが込み
上げてきて、どうしようもなく泣けました…(ここが着地点という位一番の見所でした)。
本当に大切な事から逃げてきた理人が、久我に恋を自覚する場面も、最後の濡れ場も
(特に濃い訳でないのに!)心臓がばくばくしました!ツンツンな理人が可愛かったです。
もしかしたら…繊細な文章だったり、もっと上手いBL作家さんはいるのかもしれません。
でも著者の物語の奥行きや丁寧に掘り下げて「人」を浮き彫りにする力は並外れています。
美味しい料理を味わうように「読みこみたい」…ここまで思わせる数少ない作家さんです。
人物に血が通い文字(本という物体)の平坦さ以上に、物語が活きている。
そんな風に著者の魂が籠った作品なので、心が揺さぶられずにはいられない。
そして、何度でも恋に落ちるように読んでしまう…。
三者視点からなる三人称ですが煩雑にならず多角的に捉えてあり、まるで連続ドラマの
ような見応えと臨場感でした。著者曰く連ドラを意識した構成のようですが納得。
キャラ造詣・物語の奥行き・シリーズ通してのプロット・人間ドラマと愛。…傑作です。
三冊一気読み&これを機に再読はいかがでしょう。パティシエのお話も楽しみです。
君と生きたいんだ。
★★★★★
3巻は正月の北海道、久我のフランス修業に至る回想から。
初めての料理、父親との諍い、フランスでの出会い…現在の料理人である久我の根底を知ることになります。
帰省の後、年末に理人を傷つけた久我が仕事始めにレーヴへいくとそこに彼の姿はなくやってきたのは叶とヤガミグループの人間だった。
理人がレストランを憎んでいるのは他人がそこで紡いでいる幸福な風景が自分にはないから、自分が捨てられた象徴でしかないから。
自分が置き去りにされたゴルドを買収することで溜飲を下げたい、そのためだけに生きてきた理人。
けれどレーヴを離れ、ヤガミグループ全体を揺るがす事件や思いがけないルートからゴルド手に入る機会を差し出される。
けれどそこで思うのはレーヴで過ごした日々。
叶から語られる置き去りにした父親の最期、あしながおじさんの正体と現在の彼の想いに混乱する理人。
自分のなかの弱さ、脆さを引きずり出し壊してしまう久我を恐れ、逃げるが彼は自分にしあわせになって欲しいという。
1巻から読み続けていると理人が3巻においてレーヴで食事をするシーンには静かに熱い感動があります。ラストの雛鳥のように味見する姿なんてもう奇跡です。
浮かれすぎる久我も必見。
欲しいのは置き去りにされたレストランゴルドでなくレーヴ。
それは過去でなく現在であり未来、誰のものでもない、でも確かに世界と繋がっている人生。
読み終えたあとは幸福な充足感がからだに染み渡ります。
あとがきによるとパティシエであと1巻。
「おいしい」と言えるまで
★★★★★
2巻、「えっここで続く!?」というところで終わり、3巻を心待ちにしていました。
完結の3巻。
さすが、期待は裏切られませんでした。
絶望と、再生。恋の自覚。
社内のTOB騒動と、それに翻弄される2つのレストラン。
大激震の3巻ですが、見事に結末まで持っていかれちゃいます。
理人がレーヴで食事するシーンの描写が秀逸です。
理人の心情が伝わってきて、私も桃瀬と一緒に感動してしまいました。
「人間は、愛とメシでできてる」
この台詞がいいなあ。
理人と、俺様なのに理人には弱い久我の2人の会話、楽しくて好きです。
ストーリーがシリアスな中、イチや雅紀、桃、坊さん…魅力的なキャラたちもシリーズの魅力でした。
でも叶さんは…ずっと理人を思っていたのに、思いが交わらなくて切なかった。
・・・イチの話がまだあるようで楽しみです。