努力すれば能がわかる
★★★★★
ケンブリッジ大学所蔵の和漢書書誌を作ったことがあり、また専門の近世文学及び世阿弥関係の著作もあるRymbow先生の能入門書です。能の題材が取られている平家物語などの近世文学作品は専門分野でしょうし、観世流の能も習われているそうですから、能の紹介者としては最適任者です。
前代の和歌や物語を下敷きに使って観客の想像力をかき立て、人の心の細かい襞まで描写する幽玄な能の詩的文章。数人だけの出演者による演じ分けで演出される複雑な筋立ての劇の運び。謡やセリフの調子で、観客に実体験に等しい感情を味わさせるような音楽性。これら能芸能の凄さが、21の演目をトピックして、詳細に説かれています。文章の魅力に惹かれて読み進むと、著者と一緒に観劇しながら、側らからその劇の見方を教えられている気がします。流石に一流のエッセイストです。
今の季節が秋だからでしょうか、一番印象に残ったのは、「砧」の話でした。いつか心落ち着けて一度は見て聴いてみたいと思いました。