幕末史の真実が分かる
★★★★★
新しい発見がある内容の濃い本である。
知らなかった箇所や、印象深い所に、付箋を付けてみた。
いかに学ぶ所が多くあったか、相当な数にのぼった。
幕末史の登場人物の簡潔で見事な人物評価が楽しい。
板倉勝静は、単純を絵に描いた人物だった。
この方、わが地元の殿様でした。
まさにぴったりで、思わずほくそえむ。
井伊直弼と水戸の確執について丁寧に説明されていた。
きっかけがいかに重要か、その後の歴史の流れを左右するという。
薩摩は水戸を使って桜田門外の変を起こした。薩摩の工作の巧みさ。
会津は勿論だが、長州や薩摩、それぞれの立場から丁寧に解説されてい
る。全体を見渡すことがいかに大切か。
高杉晋作の特異な存在感、幕府の無能さを誰よりも早く察知した冷静な
状況判断。彼なくして、長州藩は存在しなかっただろう。
晋作の言葉で、「人は艱難は共にできるが富貴は共にできない」という
ものがある。
岩倉が亡くなり、その後の日本を率いた長州閥を
予言していたのだろうか。
「勅書が偽物なら錦の御旗も偽物、これぞ幕末最大の謀略だった」
畳み掛けるような情熱的な文章が、140年前の革命を呼び起こしてくれる。
大久保利通が暗殺された時の馬車を見たことがある。
紀尾井坂を転げながら、天下を手中に納めた彼の脳裏に去来したものは、
なんだったのだろう。
その答えは、本書を読めば明々白々である。