幕末動乱の流れがよく分かる、お薦めの一冊!
★★★★★
明治維新は、薩長の歴史である。そのことを思い知らされた一冊である。
私は、安政の大獄を断行した井伊直弼を評価していなかった。
しかし、この考えがくつがえることになる。
『直弼を弁護したのは、海舟である。「あの男は立派だったよ」』
という意外な一行がでてくる。これは、深く私の心に響いた。
「安政の大獄は過酷な面もあったが、これを断行して開国を進めた
直弼は卓越した行動力の政治家だった」ということが理解できた。
物事を正確に判断するということに導いてくれた本書は、私には
記念に残る一冊になったように思う。
「当時の日本人は、この暴挙に拍手喝采を送った。痛快であれば
それでよしという風潮だった。勤皇・勤皇と人々は酔いしれた」とある。
当時の国民意識が、この一行でよく分かる。
このような事実を見事に表白した文章の切れが随所に出てくる。
「松平慶永、この人はいつでも第三者だった。肝心なときに姿を消していた。そういう人が生き残るのが世の常というのは寂しい話である」というスパイスのきいた人生訓、そして、引用文が的確に引用されている。
特に熱の入った、後半の盛り上がりがよい。
「会津藩は江戸に一大勢力を持っており、、、これだけの処遇を受けている
以上、京都守護職に選ばれるのもやむを得ぬことだった」とある。
会津藩が京都守護職に選ばれた経緯がよくわかった。
「薩長はイギリスに支援をあおぎ、幕府はフランスの支援を受けていた。
尊皇攘夷どころではない。日本はフランスとイギリスが入り乱れてどちらが
勝つかの、いわば代理戦争になっていたのである」...正に、本の題名の
「偽り」の真意がここにある。
幕末動乱の流れがよく分かった。歴史の醍醐味を感じ取る上で格好の書籍である。
幕末の歴史の奥深さを教えてくれた本書に深く感謝したい。