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李白の月

価格: ¥1,470
カテゴリ: 単行本
ブランド: マガジンハウス
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とぼけた妙味 ★★★★☆
 中国の志怪小説の中から、著者の好みに合う話を選んで漫画にし、その短い漫画と、その後に「蛇足」と題したコメントを付けて収めた文庫本。著者が好きな中国“志怪小説”って、話があっけなく終わっちまう尻切れトンボみたようになっていて、そこに奇妙でも珍妙でもあるとぼけた味わいが感じられると、まあ、そういう話ですね。「えーっ! ここで終わっちゃうのー。なんちゅう唐突な・・・・」って、そーいう変てこで妙ちきりんな話(を漫画化したの)が満載で、私は大いに、とまではいかなかったけれど、なかなか楽しめたのでした。

 北村薫のアンソロジー『謎のギャラリー特別室』にも収録されていた「巨きな蛤(はまぐり)」「寒い日」「家の怪」をはじめ、「李白捉月(そくげつ)」「北斗の謎」「夜の蝶」「隠された沓(くつ)」「鏡の人」「耳中人(じちゅうじん)」「へんな顔」「魂の形」「星に遇う」「落頭民(らくとうみん)」「変貌」「花魄(かはく)」「末期(まつご)の視覚」「月下(げっか)の怪」の、全部で十七の漫画が収められています。「寒い日」という話だけ短くて、題を記した扉頁を入れても四頁。あとは全部、扉頁を含めて、それぞれ八頁ほどの分量です。

 私が一番気に入ったのは、「巨きな蛤」。話の最後で味わうことのできた「ひゃっ!」ていう感触、「ここで終わっちゃうのか!?」という“謎の物語”としての風味が、とりわけいかしてたから。魅力的な『聊斎志異〈上〉 (岩波文庫)』のなかでも殊に忘れがたい「偸桃」のラストの感触を、ふと思い出しましたね。“蛇足”で紹介されていた内田百閧フ「桃太郎」の話(『居候ソウソウ―百けん集成〈14〉 (ちくま文庫)』所収)も面白そう。

 文庫巻末に、夏目房之介の「怪異オムスビ頭の秘密」。南 伸坊の『チャイナ・ファンタジー』『仙人の壺 (新潮文庫)』と本書のそばに、諸星大二郎の『諸怪志異 (2) 壺中天 アクションコミックス』『諸怪志異 (1) 異界録 アクションコミックス』、杉浦日向子の『百物語 (新潮文庫)』『百日紅 (上) (ちくま文庫)』の漫画の名前があるのがいい。同行の士として、嬉しくなってしまった。
伸坊脳内中華世界:迂闊なれど極上 ★★★★★
中国の「志怪」すなわち怪異譚を伸坊流にマンガにし、エッセイを添えた作品。時代も晋の「捜神記」から清の「閲微草堂筆記」まで広く採られている。著者自ら言われるように、これらを日本語訳から描き起こしているので、ときどき頓珍漢なことになっている。例を挙げれば、「おかしな顔」の話で原文にどんな題がついているかあれこれ推測しているが、残念ながら原文では一条ずつの題など最初からついていないし、猫がものをいう話(何に載っているのかわからないとしてあるが、宋の彭乘の「続墨客揮犀」所載)でお祓いをしにきた人物は男性でなく「老巫女」である。等々・・・けれども、そういうことが全て些末なことに思えてしまうような、黄河のごとくに悠揚たる描きぶりで、絵の時代考証がどうであれ、原文とどれだけ差があれ、この「伸坊的中国」には何のかかわりもないようだ。読んでいて自分までその奇妙な時空間の中に取り込まれてしまいそうな、一種危険なほどの名作。
なぜか中国! ★★★★★
中国は、わけがわからない。言い換えれば、計り知れない。
表題の「李白の月」は、詩仙と呼ばれる唐の詩人李白のお話。
李白は酔っぱらって、水面に写った月を取ろうとして水に落ちて死んだといいます。
それを不思議なマンガにしたてています。
でも、このあたりはまだ序の口。
耳の中に小さな人がいて、それが出てきちゃう「耳中人」。
夢で顔を取り替えてくれと頼まれて承諾すると、本当に顔が変わってしまっていたという「変貌」。
ほんとかよ? と思うような話が、なんだか妙にほのぼのとしたマンガになっています。
中国の志怪小説や伝奇などをもとにしてこういうものが描けるとは、さすが南伸坊さんです。
ゆっくりと引きずり込まれます ★★★★☆
中国の昔話を解釈した漫画と、それに"蛇足"とした著者の解説で構成された本です。集められたのは「オチ」のない、ただどうにも心に残る、不思議な引っ掛かりのあるお話ばかり。
漫画は中国画風(という言葉が正しいのか分かりませんが)のシンプルで豊かな筆で描かれており、また漫画を引き立てる役の"蛇足"も「謙遜しちゃって!」と心でうなるくらい面白いです。漫画を読んで、後に続く蛇足を読んで、そうするとまた漫画を読み直したくなります。

よく「味わい」のある何々、という言葉が作品の評価に使われますが、そのカタマリですね。