過小評価?されたアルトプレーヤー、ソニークリスを聴け!
★★★★★
アルトサックスにはブルースがよく似合う。チャーリー・パーカーにはラバーマンやパーカーズムードがあり、名手ソニー・スティットはアルトを持つとそれらの曲をよくプレーした。ソニー・レッドやアート・ペッパーもブルースが得意だった。あのキャノンボールでさえもブルーージーな曲の出来映えは見事だった。アルトサックス奏者ソニー・クリスもこの例に漏れない。彼のアルバムの中で一番ブルース臭が強いのがこの"This Is Criss"だ。
いきなりの不機嫌なスローブルース"Black Coffee"のローダウンぶりからして強烈だ。ウォルター・デイヴィスの音数の少ないピアノ、ポール・チェンバースの沈んだベースとアラン・ドーソンの微に入り細に入ったドラマテイックなドラムスに乗ってパワフルにブルースを歌い上げるのがソニー・クリスのアルトだ。チャーリー・パーカーの線をより太くしたような音圧の高さに驚く。チェンバースに少し元気がないように感じるが、没年の1965年の録音だから仕方が無かったのかもね。スティットもやった"When Sunny Gets Blue"でのプレイでは程よい甘さが心地良い。パーカーへの恋慕を包み隠さない潔さも好きだ。スティットはパーカーに似ていると言われることを嫌いテナーをプレイしたが、クリスはそう言われることをきっと好んだろう。あの"Sunrise,Sunset"も気の利いたブルース作品に料理している。名曲"Days Of Wine and Roses"はアップテンポにアレンジされているが、この辺りの一直線なプレイぶりがこの人の持ち味なんだろう。雄弁過ぎるプレイというか、全て語る一歩手前で止まればもっと良かったのかもしれない。
全編に渡ってケレンミのない力強いアルトが聴かれる出来の良いアルバムだ。ブルース好きの人にはタマラン一枚でもある。ドーソンの手の込んだドラミングぶりも見事だ。