いいぞ、ゴンクール
★★★★★
無類の面白さである。
日記というのは、その中の脚色や嘘も含めて、書く者の人となりを忠実に写しとってくれるものだが、これほどあけすけに自らを語る日記というのもまずあるまい。 19世紀パリの記録としてだけでも興味深いのに、書き手の二人の片言隻句の妙たるや、スバラシイの一言である。ここには浪漫主義が真に浪漫主義だった頃の文人が居る。
下巻が出るのが楽しみである――否、多くの人は、本書の優れた中身に感銘を受けて、かえって抜粋版としてのこの文庫に不満すらいだいてしまうのではなかろうか。ベンヤミンのパサージュ論を文庫で出したんだから、これも是非完全版を。ねえ、岩波さん!