沖縄の過去と未来を考えるのに役立つ。
★★★☆☆
本書の軸は、沖縄地上戦の悲惨さの記述にある。それは、アメリカが上陸のはるか前から沖縄の占領(植民地化)を決定していたこと、日本政府がアメリカ軍の上陸が確実なのに十分な対策を打たなかったこと、そして何より14万人もの県民が命を落としたことなどの全てを含んでの悲惨さである。
それを大田氏がこれまでの研究蓄積を生かし、豊富な資料、数値で示しており、なかなか説得力がある。また、大田氏が知事時代にエリート養成のために留学支援制度を充実させたこと、沖縄は米軍基地がなければ生きていけないという俗説の否定など沖縄の未来を考えるヒントもちりばめられている。
ところどころ、大田氏と佐藤氏の話がかみ合っていないところがあったが、生の対談を下に作った割にはそういう箇所も少なく、読みやすかった。
沖縄問題を理解するための良書
★★★★★
本書を読んで、2つの点で、ショックを受けた。
第1は、沖縄が、戦前戦後を通じて、日本政府、旧日本軍、アメリカ政府から受けた扱いが、
想像以上にひどかったことである。
第2は、そのことが、沖縄の新聞・テレビでは絶えず取り上げられているのに、
本土の新聞・テレビでは、ほとんど取り上げられてこなかったことである。
外務省は、沖縄大使(国内なのに「大使」なのである)との通信には、今でも暗号を使用しているとか。
政府も本土マスコミも、無意識のレベルでは、今でも沖縄を「異国=日本ではない」と認識しているのかも知れない。
沖縄問題を考える上で、本書は第一に読まれるべき本だと思う。
沖縄の深層
★★★★★
琉球は、かって独立王国であった。
唐の世から、ヤマト世、アメリカ世、そして再びヤマト世へと翻弄された。
こういうやり取りがある。
大田の、グルジアから来て博士号を取得した女性から「世界中に沖縄がある」と言われた。佐藤は即座に、この人はロシアとの再統合論者だと思う。沖縄を一つのモデルとして考えることにより、マイノリティ・グループであるところのグルジア人は中長期的にロシアと一緒にやった方がいいという作業仮説を持っているのではないか。との発言である。これは、沖縄についての佐藤のスタンスであり且つ知力の冴えを感じる。
日本政府は、一般には知られておらず有耶無耶に終わったが、明治時代琉球についてアメリカの仲介により清国政府との間で琉球分割案をほぼ合意していたという事実がある。1979年に表面化した「天皇メッセージ」もある。
これらから見えることは、必ずしも固有の領土とは見做してはいないとも言える。
同胞と言うからには同義的負い目は避けられないであろう。
現在、普天間基地問題が喧しいが現政府首脳は歴史の深部を腹に入れて対処しているのであろうか。道具のように扱っているように見えるが。杞憂であれば幸いである。