読み物。
★☆☆☆☆
シャネル社の情報自体は著者が言うとおり少ない。よって、様々な雑誌記事、本を引用しまとめて書いたことでこの本自身が何らかのデータにはなりうるかもしれない。
しかし技術経営と表題にはあるが、経営学の本として読むと、内容にまったく定量的データが存在せず、 著者の主観が散見される。また、雑誌記事や本、インターネットサイトを基に書かれていて、特にそれ以外に情報はもちろん、知見が得られるというものでもないと感じた。
シャネルのすばらしい哲学に触れることができる
★★★★★
ラグジュアリーブランドとしての「シャネル」ととともに、企業としての「シャネル」もよくわかる一冊である。
まず、シャネルブランドを語るには、デザイナーのココ・シャネル(本名:ガブリエル・シャネル)とその周辺の人物について知ることから始まる。最近は映画やメディアでもココ・シャネルの生涯が取り上げられることが多くなった。それは
『ココ・シャネルが生み出したファッションはしばしば「男性に支配され従属する女性の心と体を解放した」とか「女性たちに服を通じて新しい生き方、新しいスタイルを提案した」とか言われ、プライベートでも仕事でも「自立した女性」ないしは「20世紀を代表する女性」として讃えられる。しかしながら、その実像は、男性の庇護を受け、富豪の出資を受けてビジネスを立ち上げ起動に乗せているように、男性からの影響を大きく受けた半生ということもでき、この矛盾ないし葛藤が制作する映画監督の興味ややりがいを奮い立たせるのかもしれない。』
と著者はいう。
ココ・シャネルは孤児院育ちで身内と別れてからは身寄りがなく、生涯独身で子供もいなかった。よって、ココの血縁の「シャネル家」は存在しない。ココ・シャネルの引退後はココ・シャネルとは血縁関係にないヴェルタイマー一族がシャネルのオーナーとなり経営を継ぐこととなった。デザイナーは超一流 (フェンディのデザインを40年していた)のカール・ラガーフェルドを配置した。カールは老いたココ・シャネルをぞんざいに扱った。カールは過去の遺産 (ココが残したもの)を一度捨て、過去を管理するのではなく、未来につなげる選択をした。結果的にカールが取ったこの行動で、シャネルは若さと権威をよみがえらせ、現在の繁栄に至っている。
では、企業としてのシャネルはどうか。シャネルの最も重要な「売り」の1つはブランドであろう。しかし、ブランドというものは、デザインやイメージといった、定量的な計測が不可能な要素に依存する部分が大きいという性質ゆえに、不確実性が高い。
1970年代に欧米のブランドが日本に流通しはじめた。当時、ルイ・ヴィトンやエルメス、グッチといった欧米の一流とされるブランド製品は、それが「ブランドで ある」というだけの理由で売れた。製品の質やサービスなどの本来重視されるべき要素は二の次に考えられた。デザインが優れているよりも、「高級ブランドだ ということを、誰がみてもわかること」が重要であった。しかし現在では「それがブランドだから」という理由のみで支持されることは少なくなってきている。 長い歴史の中で蓄積された、確固たる技術力に裏打ちされた品質や、企業哲学あるいは理念によって生み出される価値も、顧客にとっては重要になってきている のである。
ブランドを維持する難しさの例でいうと、
有名な香水「シャネルの5番」も一時期「二流の香水」と呼ばれるようになって、希少性と独自性を演出するためにドラッグストアの棚から「シャネルの5番」を撤去した。
また、ティーンネイジャー用の雑誌にシャネルやグッチが取り上げられ、若者が気軽に身に付け「シャネラー」や「グッチャー」と言われたせいで、既存の客が離れてしまうということもあった。
私自身、ブランドで勝負している企業は一度ブランドを勝ち取ってしまえば、あとはあぐら商売なのか、と思っていたので、ブランドを守る苦労という点で非常に興味のある話であった。
現在、海外のブランドでは「日本市場」は非常に大きい。多くのブランドでは建前で
「日本の消費者はレベルが高いので、それに合わせていかなければならない」
との考えを示す。本音ではブランドに走る日本人を軽蔑しているブランドもあるだろう。どちらにしても、それらはあくまで日本人に照準を合わせるというスタンスが一般的である。
しかし、シャネルの日本法人のコラス社長はとても親日家であり、シャネル日本法人の発展だけでなく、日本国自体の経済発展にも貢献しようという姿勢を見せている。
「ただ高いものを売るだけじゃなくて、やはりもっと職人の技が入ったもの、もっと歴史が伝わるものを日本に紹介しなければならない」
「ものには魂があり、つくった人の魂が宿っている。そういう職人の技がわかるから、日本人はブランドのことも理解できるし、それがDNAとして備わっている。日本製品が受け入れられているのも、そうした下地があるからだと思います。
〜中略〜
日本は世界一高い基準なのだから、これに合わせてやれば、アメリカでもヨーロッパでもやっていけると思います。」
これはコラス社長の言葉である。
他にもこの本には、人材への考え方、国へのフィードバックなど素晴らしい考えも載っているし、またココ・シャネル自体も素晴らしい考えをもった人であることがわかります。
私自身、シャネルにはあまり良いイメージがなかった。どちらかというと下品というイメージすらあった。
ただ、このシャネルという企業の考え・哲学、ココ・シャネルの想いを知れば知るほどシャネルというブランドに対し、興味を持つようになった。
ブランドの価値
★★★★★
時代が変化しても、その中で生き抜いている価値観を始め、シャネルの素晴らしさが伝わってきました。ラグジュアリーブランドに関する本はたくさんありますが、その中でも、しっかりと学術的に書かれている本だと思います。