英国人は妖精が好きで、かのコナン・ドイルが妖精の存在を信じていたという話が知られている。また英国人は幽霊(ゴースト)好きで、「出る」といわれる町や村には観光客が押し寄せるという。この本に書かれているゴーストは王侯貴族など歴史上の有力者・権力者たち。凄惨な権力闘争の果てに恨みをのんで死んでいったものたちのゴーストで、日本でいえば怨霊に相当するだろう。
さまざまなゴーストにまつわる言い伝えは、勝者が書いた「正史」とは異なる内容をもち、あるいはこちらが真実かも知れないのだ。そう、支配者に異を唱えることのできない民衆は、ゴースト伝説という形で後世に真実を伝えようとしたのだ。
著者はそのような観点から「現地」をめぐり、人々の声を聴き、歴史の裏面に思いをはせ!る。かれの旅に同行しながら、オモテの英国史をウラから復習してみるのも面白い。伝説をそのまま真実ととらえることはできないが、正史の疑わしさを認識できるだけでも価値がある。