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幽霊を捕まえようとした科学者たち (文春文庫)

価格: ¥980
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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心霊現象を科学で解明しようとした試みの記録 ★★★★★
「主流派の科学者らにはこのテーマを取り上げる意欲も覚悟もないことを、ふたりは承知していた。だから自分たちがやるのだ」

科学技術が大発展を遂げた19世紀後半、心霊現象も科学の力で解明しようとする機運が生まれた。まずイギリスで心霊研究会(SPR)が、次いでアメリカ心霊研究協会(ASPR)が設立される。テレパシーやエクトプラズム等の用語も、この一連の研究から生まれた。本書はその足跡を調査して一冊にまとめたもの。著者はサイエンスライター。研究に携わったのは、次のような人たちである。

ウィリアム・ジェイムス:実験心理学創始者
ヘンリー・シジリック:功利主義哲学者
アルフレッド・ウォレス:ダーウィンと共に進化論を発表
レイリー・ストラット:ノーベル物理学賞受賞
シャルル・リシュ:ノーベル生理学医学賞受賞
ウィリアム・バレット:ケイ素鋼を発見
オリバー・ロッジ:検波器を発明
ウィリアム・クルック:タリウム発見と真空放電管発明

キュリー夫人が降霊会に登場し、エジソンが新聞で意見を述べる。うさんくさい目で見られながらも、当時一定の関心を集めたことが伺える。

だが、簡単にはいかない。95%は信頼のおけないデータ。一般の科学者達の否定的な姿勢。 宗教界の反発。 興味本位の報道。 測定や証明の困難。 いかさま霊媒師達による混乱。心霊研究を行う学者を非難し、大学から追放する動きも起こる。幽霊より人間の方が怖いかも、と思う位だ。

そして、20世紀に入り、中心になっていた学者達が次々死去。錬金術から化学が生まれたように、オカルトに科学を持ち込んで新分野を切り開こうとした意欲的な試みの話は区切りを迎える。

かなり面白いが、気味の悪い話が多い上に、翻訳物特有の読みにくさも多少ある。

物理化学原理に基づく人間意識の研究は、21世紀に入ってもまだ十分なレベルに達していない。より分けて残った5%の謎を科学の力で完全に解き明かすには、もっと関連基礎研究が進むことが必要だろう。
神なき世界の人間と幽霊 ★★★★★
これはめちゃめちゃ面白い。19世紀後半から20世紀にかけて、アメリカとイギリスを中心にノーベル賞級の科学者たちが心霊にハマっていく様子を人物相関図を中心にほぼ年代に沿って描いています。ダーウィン「種の起源」で神様の天地創造が明確に否定されてから科学と宗教が対立するようになり、その狭間で「科学では説明できない人間らしさ」を探そうとした科学者たち。今も当時も心霊なんて子供だましに過ぎませんが、しかし今も当時も科学で人間のすべてが説明できるのかというとそうではない。脳の仕組みなどいまだに謎だらけです。彼らにとって科学でも宗教でもない第三の新しい道が心霊だったわけで、私たちも笑ってはいられません。

ほとんどはインチキ霊媒師のトリックを暴く彼らの行為は、また、ラップ音だのエクトプラズムだのを真剣に検証することにもなっていて、「神なき世界の人間探究」の意気込みがひしひしと伝わってきます。非科学的だと頭から否定する頑固な科学者のほうが愚かにみえてくる。

科学と心霊を結び付けようとした科学者で最も有名だったのがアメリカ実験心理学の権威ウィリアム・ジェイムズ(作家のヘンリー・ジェイムズのお兄さん)ですが、ほかにもたくさんの科学者が出てきます。個人的に感動したのは、初期の研究メンバーの誰かが死ぬと、その後の心霊実験の場にその霊が出てくるというクダリ。心霊現象の研究者が自ら心霊現象になってしまう。もちろん霊媒師が本物か偽物か、そもそも心霊現象などあるのかという当然の疑問もありますが、研究者であること(人間)と心霊現象になること(幽霊)の、このあいまいな境界。本書は、神なき世界でいかに人間と幽霊が近づくのかについての興味深い事例集でした。
懐疑論者の基礎知識用に推薦 ★★★★★
 この領域の科学的研究の歴史に興味がある懐疑論者ならば、語られる現象そのものを評価する意味ではなく、この領域において、かつてどういう立場で、誰がどのように何をしたのか、基礎知識を得るためにも読んでおきたい。

 懐疑主義の文脈で心霊主義の歴史を扱うと、大抵はフォックス姉妹に始まり、ウォレスやドイルの無能さがきて、マジシャンの話につながる流れが一般的である。

 そのため、しばしばそれで全てだと勘違いしている者がいるが、フォックス姉妹よりも前にスウェデンボルグやカルデックもいたし、SPRにしても、どうしようもない懐疑派団体になってしまった、という不評の時代があったのだ。

この時期のホジソンやシジフィック夫人は、まさに懐疑論者である。不正はガンガン暴いていき、残った部分を最終的に調査し、肯定的な立場にいたるのだから。ならば、それは軽信ではないし―私は立場が違うことを強く主張するが―評価しているし尊敬する。

 そのような、ビリーバーからは懐疑主義と罵られ、科学者からはビリーバーと罵られてきた時期のSPRは本当に素敵である。もちろん、死後生存をはじめ、現在は否定の立場が妥当に思うが、安易な否定は通じないし、もったいない。それなりに腰の据わった研究もあるのだ。また、私はいくつかの事例は、本当に真相が知りたいと強く思っている。それが退屈な結論であってもだ。
ウィリアム・ジェイムズ伝 ★★★★★
 邦書には一切明示されなかったが、本書の副題は「ウィリアム・ジェイムズと死後の世界の科学的探究William James and the Search for Scientific Proof of Life after Death」であり、それは邦訳巻末の年表に伺われるだけになっており、刊行を急いだためか訳者あとがき、解説のようなものは一切ない。各章の表題は大幅に改訳されている。それでも貴重な一書であることに替わりはない。
 かって英国の宗教学者J・パリンダーが『神秘主義Mysticism in the World's Religions』(講談社学術文庫)を出してジェイムズの『宗教的経験の諸相The Varieties of Religious Experience』の続編を意図したとされるように、本書は逆にJ・オッペンハイムの『英国心霊主義の抬頭The Other World: Spiritualism and Psychical Research in England 1850〜1914』(工作舎)の続編を意図していると言えるだろう。しかし、パリンダーが世界宗教を現代のオカルトや薬物使用まで掘り下げていくのに対して、本書はオッペンハイムの書を超えるようなものではない。勿論、アメリカ心理学の祖ジェイムズの言動だけをその生涯にわたって追っているだけではなく、一方のシジウィック・マイヤーズ・ガーニー・ウォレス・クルックス・レイリー卿・ドイル・トゥウェイン・バレット・ホジソン・ロッジ・リシェ・キュリーと、他方のファラデー・ダーウィン・ハクスリー・ティンダル・エジソンと、そしてフォックス姉妹・ヒューム・ブラヴァツキー・パイパー・パラディーノという錚々たる霊媒実践者を一渡り扱っているし知的誠実さの感じられる描写になっている。あくまで、先にオッペンハイムの書を読了していればちょっと薄められたような気がするだけである。
 心霊研究史は宗教史を到底超えられないのである。エリアーデとデネットを対峙して読み、偶の息抜きに本書も読み返してみたい。
真理を求めて ★☆☆☆☆
 19世紀から20世紀にかけて、超常(心霊)現象について科学者たちのグループが検証し、できるだけ論理的にその現象を分析して、その経緯をまとめた本。
 はじめに断っておくが、私はクリスチャンである。その立場でこの本を読むと、いろいろ問題点が出てくる。 まず、2章の「科学VS宗教の時代」に述べられている進化論についての考え方は、完全に間違っている。キリスト教では、神様によってヒトが作られたと教える。たとえば、もしヒトがサルから進化したのなら、ヒトとサルの中間形態の化石が大量に発見されるはずである。しかし、いくら発掘が進んでも、そんなものは見つかっていない。
 また、科学では説明できない部分について超常(心霊)現象にその答えを求めるという姿勢も疑問である。私のようなクリスチャンからすると、彼らの行き着く先はキリスト教しかないはずである。クリスチャンにとっては、聖書の教えこそ唯一不変の真理だからである。この本に登場する科学者たちも行き着く先は聖書しかないはずなのだ。さて、キリスト教では、超常(あるいは、心霊)現象のほとんどはサタンの仕業だとする。聖書にははっきりとサタンの存在が書かれている。サタンは、人間よりすぐれた力を持っており、人間を間違った方向に導き、地獄に落とすために超常現象などを起こすのである。従って、超常現象を研究するのは、かえって人々を誤った方向へ導く恐れがある。
 読んでいくうちに、いかに多くの(正統な科学者を含む)知的な人々が超常(心霊)現象に対する論理的なアプローチをしてきたかということに驚かされる。私には、科学の限界を彼らが感じ、その空隙を埋めようとしたように見えてならない。それが、逆にダーウイン以後の科学万能主義の矛盾をはっきりと表している。