忘れられない
★★★★☆
衝撃的で感動的なエピソードが満載の一冊ですが、
「感動した」などどいう感想よりも、
著者の行動には感嘆の声しかない。
営利目的でもなくこういった行動ができるのは
もはや使命感としか言いようがなく、
どのような言葉をかけていいか見つからない。
連絡先を公開する勇気も凄いが、
文庫化するにあたっての葛藤は
職業として作家を営む者とはレベルが違うと思った。
本人とお話する機会に「体に気をつけて下さい」との言葉に
笑いながら「それは無理だな」と言った声の響きが忘れられない。
絶望の中で
★★★★★
レビューを書く気は無かった。
彼の著書を読み、講演会に参加し直接言葉を交わした中で感じた事を拙い言葉で表す事は逆効果であると思ったからだ。
彼は自分の無力さを本当の意味で知っている人なのだろう。そして、そんな自分を歯痒く思っているに違いない。
全ての子供達を救う事等出来はしない…それでも何もしないよりはいい...。
例え偽善や欺瞞だと罵られてもいい...。
一人でも多くの子供達に自分の出来る何かを残せるなら...。
そう、彼は考えたに違いない。
彼の背中にはいつも無力感と孤独を感じる。
何も出来ない憤りも...。
薬物依存や精神病、家庭内暴力や犯罪の道への誘い…これは今の10代だけの問題では無いのだ。
それは親の世代にまで遡る根の深い現代社会の病巣だ。
彼が出来る事には限界がある。彼も人間であるからだ。
問われているのは、我々自身が現代社会の問題とどう向き合うか?である。
その答えはこのレビューを読んだ方々の数だけ存在すると思う。
彼を見ていると、あのアウシュビッツの地獄の中で聖人として天に召されたコルベ神父の姿と被って仕方ない...。
闇の中の一筋の光...。
それは「希望」と言う名が相応しい。
子どもの身近な大人へのメッセージ
★★★★★
夜回り先生、水谷修先生の著作。
何人もの子どもたちとのいくつものエピソードが掲載されているが、そのどの子どもたちにも真っ直ぐに向き合う姿。読んでいてハートの奥底から熱くなり、考えさせられる本。
彼みたいな教師がいれば、と彼に救いを求めることは簡単だが、もっと身近な親や親族が考えなきゃいけないこと、そういった人たちへの強いメッセージも感じられた。
言葉では言い表せない感動です
★★★★★
薄汚れた都会の夜の世界、それは子どもたちを食い物にして生き延びようとする大人たちが作り出した虚構です。薬物を求めてそんな世界に走ってしまう子どもたちには何の罪もありません。非行に走ったり自らの命を絶ってしまった子どもには必ずその理由があります。
淡々と書かれた記録だけに、より一層の重みを感じてしまいます。先生は決してきれいごとだけで済まそうとしていません。水谷先生自身も夜回りを始めた最初、薬物に対する専門的知識がなかったがために、関わった子どもを死に追いやった自らの罪について告白されています。
おそらくその十字架を一生背負って歩いていく覚悟をされたからこそ、自らの命がある限り、自らの命を削りながらでも一人でも多くの子どもたちのそばにこれからも付き添って行かれるんでしょう。
子どもは社会の宝であり、親の所有物ではありません。先生のような大きな志や行動力のない私にできることは一つ・・・ほめてほめてほめまくって、せめて自分の子どもにだけでも自身の存在の大きさに気づいてもらうことです。
オビのコピーは不要
★★★★★
『50万人読者が涙した』という余計なコピーは不要だった。著者が伝えたいのは、決して読
者を泣かせることなどではない。
また、本書に書かれている内容が全て本当であるのかどうかもどうでも良いことで、著者が実
際に行動し、そして何人かを救えたのであれば、それで十分だし、立派なことだと思う。劇的
である必要は、ない。
同じことを考え、行動している方々は決して著者だけではないし、著者は素晴らしい、対して
他の教師と教育行政はだらしないなどと短絡的に結論するつもりもない。ただ、人は自由な立
場であれば及んだ思いが、組織に所属した途端に、組織を立てて組織の規律に絡め取られる羽
目になる。個人的な思いや正義が組織では否定されるものだし、組織外の行動は、自己責任の
ボランティアでしかなくなってしまう。多くの人にとって、自己の利にならず、危険で日々の
生活にも支障をきたしかねないとなれば、行動できないのはやむを得ないことだろう。そうし
た人々(自分を含め)を責めることはできないし、守りに入った人間の弱さでもあると思う。
それでも敢えて行動に出ようとする人たちがいることを確認するだけでも、本書を読んだ意義
があるのではないか。本書に登場する人物が、その後皆、幸せであればよいと思った。