現実との乖離が凄まじい
★☆☆☆☆
本書はタイトル通り核武装に関連した書籍である、ただしその内容は各界の専門家や
学者らの述べる理論というよりは、市民団体か何かのパンフレットに似たような内容であり、
これはもはや、ある種の断末魔であるとさえ私には受け取れた。
まず最初に目に入ってくるのが「核武装の検討を容認する国会議員リスト」である、
「核武装を容認する」ではない、「核武装の”検討”を容認する」である。
つまり、核武装に反対しているのではなく、核武装をするべきかどうか?ということを論ずること
自体に反対しているのである、この時点で、本書が「核武装の是非について論じる」性質のもの
でないことは解かって頂けると思うが、本書を読み進めていけば、それは更に強固に感じられるであろう。
そういうスタンスで作成された書籍のため、内容が信じがたいほど現実と乖離している、
例えば日本が核武装すると日本と中国の経済は破綻するらしいが、その根拠は全く提示されない、
こういった箇所は各所に存在し、エキセントリックな論理展開がなされているといえよう。
従って、本書は真摯に「日本国の核武装」のメリット/デメリットなどを知りたいというような用途には
全くお勧めできないが、数年後にはこのような主張を本気で行っていた人々がいたという事実が
誰にも信用されない可能性が高いので、そういう時のための資料的/歴史的価値を見越して
購入すべき類の書である。