天才ローウェルの死を悼みます.
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フランク・ザッパのオーディションで落とされたローウェル・ジョージが結成したのが,このバンド.彼らは,ブルーズ,ゴスペル,デキシィランド・ジャズ,ロックンロールやカントリーまで,アメリカ音楽のルーツ的な要素を多彩に取り込みながらも,あくまでもLA的な,都会的で乾いたサウンドを提示してゆきます.
シンコペーションを多用した,時として前衛的とも言える電子的な楽器音と,対極をなす人間くさいボーカルのミクスチュア.緻密に計算され尽くしたアレンジ.そして,そこここに顔を出すローウェルのユーモア精神は,彼がフランク・ザッパに憧憬の念を抱いたことを示す証拠かもしれません.彼が結成したリトル・フィートは,フランク・ザッパと同様に,アメリカン・ロックの金字塔と言えると思います.
天才ローウェルのスライド・ギターにはブルース臭が無く(!),強くコンプレッサーをかけた譜割りの長い独特のフレーズには,高いオリジナリティがあります.彼は,インタビューで,日本の尺八にヒントを得たと語っています.女性スライド・ギタリストとして知られるボニー・レイットはローウェルと出会い,彼の影響を強く受けてそのスタイルを変えます.ジョン・ホールも時折,ローウェル的なフレーズを弾くことがあります.ローウェルのギター・スタイルは,彼の卓越したボーカルとともに,後まで語り継がれるべきものでしょう.
このアルバムを聴きながら日本公演の時の情景を思い起こすと,何か胸に迫るものがあります.あのとき,ローウェルは既に肥満体でした.ああ,もっと長く活躍してほしかった.あらためてその死を悼みます.
偉業は彼らを駄目にしなかった。
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とってもアーシーで味わい深いバンドだったリトルフィート。彼らのキャリアは、初期(Little Feat,Sailing Shoes),中期(Dixie Chicken,Feats Don't Fail Me Now),後期(The Last Record Album,Time Loves A Hero)に大きく分けられる。それぞれの時代に、初期はSailing Shoes、中期はDixie Chiken、後期にはThe Last Record Albumと言う傑作を残している。初期のシンプルでブルージーなサウンドは中期のニューオリンズ風リズムを強調したR&Bを経由して、後期のソウルフルでジャージーなものに変化していった。それはまるで黒人音楽の40年代、50年代、60年代の流れの変化に符合する。彼らLittle Featもやはり、アフロアメリカンミュージックから多くを吸収して成長していったバンドだった。
さて、Little Feat 初のコンピレーションである本作には彼らのキャリアの初期、中期、後期から全19曲(その多くがスタジオのオルタネイトテイクや未発表ライブ)が収録されている。Little Featとは、一人の大変個性的なボーカリスト兼スライドギタリストと、バックのサウンドを作った優れたリズムセクション(ドラムス、キーボード、ギター、ベース、パーカッション)の融合隊だったことが分かる。そして、両者のバランスや力関係の変化によって彼らのサウンドも変化していった。本作でもローエルジョージのアーシーなボーカル(彼はブルーアイドソウルシンガーベスト5に絶対入ると思う)とブルージーなスライドギターとバックのファンキーで味わい深い演奏がたっぷり楽しめます。
初めてLittle Featをお聴きになる方には、上記三枚の傑作オリジナルCDをお薦めするが、彼らのファンの方にとっては非常に興味深い、隅から隅まで楽しめる、決して見過ごすことのできない作品集だと思う。
最初の未発表曲集
★★★★☆
80年にいったん解散したLittle Featのレアトラック集
未発表ライブは③、⑤、⑧、⑪、⑯、⑱、⑲
⑤はDoobieのメンバー(Michael、Pat)参加
⑱はLowell追悼コンサートの録音でLinda Ronstadtのボーカル
逆に④、⑦、⑨、⑬は既発売バージョン
⑭、⑮はLowell抜き新録音
⑰はLowellソロ録音
というような感じです。
⑩はLowellのデモで彼はこの曲が大嫌いだったが、なぜかテンポを
早くして一時期ライブのオープニングに使っていた(それが⑪)と
Featのロードマネージャーが述べております。
SOUTHERN ROCK
★★★★★
変則的なコンピレーションアルバム。希少音源とライブをまとめたもの。あなどってはいけない、このバンドはレア音源でもいい。演奏力はしっかりしているし、アンサンブルもばっちり、ファンキーな味もスライドギターもきまっている。ライブ音源はやはりさえています。ダイナミックな演奏がローエルジョージの偉大さをしのばせます。たっぷり楽しみましたよ。10点中10点