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マッカーサーの二千日 (中公文庫)

価格: ¥1,300
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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平和的な日本の生みの親? ★★★★☆
太平洋戦争中に生まれ、敗戦直後の米軍による占領時代を小学生として過ごした我々
の世代にとって、ダグラス・マッカーサー最高司令官の存在は、色々の意味で今
日ある我々の人格形成に大きな寄与をしてきたといえる。その意味で、彼による戦
後日本の民主化の在り方、歩み方をもう一度顧みて、その是非を問ってみる一助と
して、この本は大変参考になると、私は信じる。1978年出版の英文伝記「General
Douglas MacArthur」(American Caesar) by William Manchester はアメリカ人の
目で見たマッカーサー伝であるが、この占領史は、占領時代を成人途上にある日
本人として過ごした著者による観察であり、(既に3人の子供を抱えた)私の両親
の目に写ったマッカーサー観と比較しながら、面白く読ませてもらった。「マッカー
サー憲法」とも呼ばれている今日の日本国憲法の作成は、彼の占領政策の中でも、
最高の傑作であるといえる。第9条(戦争放棄)が現在でも問題になっているが、
私の個人的見解では、天皇に関する第1ー8条は時代遅れになっているので、も
う破棄して、天皇制を廃止すべきだが、あとは「先見の明」のあるリベラルな内容
であり、そのまま維持するのが賢明であろう。

さて、最近の米国(ブッシュ政権)による泥沼「イラク占領政策」と比較して、マッ
カーサーの日本占領政策は抜群に勝れていた(老獪そのものだった!)。昭和天
皇の戦争責任を問わぬ代わりに、象徴化した天皇を巧みに背後で「隠れ蓑」として
使って、敗戦直後の混乱した日本の統治を「無血」で(旧日本軍部の反乱を完全に
抑えながら)成功。いわば「男から武器を取り上げ、女に参政権を与える」近代日
本を見事に築き上げた! 彼は、占領国を丸腰で堂々と歩く、恐れを知らぬ大君だった。
実は、日本の民衆が彼の身を守ってくれると確信していた、敵の将軍だったが実に
「あっぱれな人物」である。。。

1951年の朝鮮動乱の勃発に伴い、マッカーサーの日本占領政策は終了して、日
米平和条約と日米安保条約の締結によって、日本は米国に軍事基地を提供する
「独立国」(実質的には「属国」!)になった。その後、1972年に沖縄の日
本本土への返還を条件に、本土内にある米軍基地をほとんど全部、沖縄に移転さ
せた。さて、その基地を日本国外(つまり、米国領土内のグアム島など)へ移転
させ、日本が真に独立できるのは、一体いつの日になるだろうか?

「オレンジプラン」への挑戦 ★★★★★
フィリピンを「第二の故郷」とまでいう経歴や、ケソンとのパイプ、トルーマンとの確執、
ある種傲慢ともみえる人となり、といったマッカーサ伝記に留まらない。
対日戦以前のマッカーサのテーマを、米国の対日戦略「オレンジ・プラン」(日本を太平
洋における仮想敵国と位置づけた米国戦略案。日本の南進拡大にあたっては、フィリピン
防衛は困難となるというのがその基調)への挑戦と位置づけている。このプランは日露戦
争に既に検討を開始、米国の戦略構築の周到さに驚かされる。
「占領」をどう評価するかを主テーマにすえた、優れた太平洋戦争入門書となっている。
巻末に文献案内と索引もあり便利である。
鶴見俊輔との関係からか?中韓=被害者、日本=侵略者という基本的トーンはあるも、
それは「あとがき」に伺われる程度で、内容はきわめて抑制の利いた記述である。
東京裁判や山下・本間裁判の理不尽さを冷静に批判している点も信頼がおける。
「占領史」の中の一例としてみた場合、日本でのそれは極めて成功といえる、というのが
著者の評価である。
現代日本の基礎がこの時期につくられた ★★★★★
 2004年改版。初版は1974年。著者新世紀版へのあと書きにあるように、「…日本を占領したマッカーサー元帥とその時代を簡潔にまとめた本が、いまでも日本語ではこれしかない…」というのはいくらかさびしい。なぜなら、現在の日本のありようの多くが、この時期に具体化したからだ。

 それは、日本国憲法、自民党につながる政治、財閥解体、農地改革、天皇の人間宣言、自衛隊の前身警察予備隊、公務員のスト権剥奪、共産主義の排除などだ。

 これらについて、本書は整理した形でのイメージを与えてくれる。これまで以上に日本人が国際社会と関わっていく新たな時代が始まっているようだが、国際関係に対するはっきりとした見識を持つためには、自分たちの社会の構造を知る必要があり、その意味で本書の示すものは貴重だ。