ビジネスから観光まで応用範囲の広い良書
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副題に「中東ビジネスを成功させる19の掟」とあり、ビジネス上の情報を期待して読みましたが、その情報の裾野の広さに良い意味で裏切られました。
著者のような文章を書ける人間は本当のグローバル社会の住人ではないだろうか。なにげない平坦な文体でありながら、使えてためになる情報が時にはディープに入っているのです。英語が話せてアメリカ人とビジネスしてるだけで、グローバルな人間と鼻高々にコンサルタントやっているような連中とは違います。イラストや2008年秋現在、アラブ人が日本にどのような興味を持っているか等、情報って、こうやってなにげなく(しかし、しっかりと)わかりやすく提供できるコミュニケーション能力の高さにも感心しました。
日本人の男性が書くグローバル・ビジネス本って、あれしちゃいけない、これでは通じない/勘違いされる、と打ち消し表現のオンパレードですが、この本は、日本人は大げさに俳優になったかのように挨拶したり会話をしたほうが感謝されますよ、といった、肯定文で、非常に有用なアドバイスがつまっています。日本人ビジネスマンが無表情であるために世界中で勘違いされているのは今にはじまったことではありませんが、アラブ人ならずとも、本当にグローバルにビジネスをする人達も、ぜひ一読されることをお勧めします。三角測量と同じです。常に日本人と欧米人、という2点観測にはまってしまうと見えないことが、この本には書いてあります。
イスラームの宗教的なことにも触れられていますが、基本的なことに触れながらも、この本は一歩も二歩も踏み込んだことを書いています。★は10個でも差し上げたい気持ちです。