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小津安二郎の食卓 (ちくま文庫)

価格: ¥819
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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食のシーンから小津映画を分析し、その真髄に迫る良書 ★★★★★
小津映画に数多く登場する食に関係するシーンを、ラーメン、鰻等の食物だけでなく、料理屋の女将、鮨屋の客、BAR等の章も立て、名場面の演出や変奏曲のように繰り返し登場させた特定の食と人の関係から、小津映画の魅力の秘密に迫る好著だ。

小津映画のファンなら、章のタイトルから分析対象の作品の見当がつくだろう。鱧(渋い!)は秋刀魚の味。ラーメンはお茶漬けの味と秋日和で、両作のシーンの作り方の違いから演出方法の様式化の進行を語る。バー・ウィスキー・サラリーマンの組み合わせは今のサラリーマンも共感する場面ばかりだ。

秋刀魚の味の軍艦マーチのシーンを絶賛し、麦秋を最高の日常グルメ映画とする見方には同意できる。映画のショットの写真や店の看板等の挿絵、会話の活字化、映像化されなかった脚本の紹介もある。

単行本にあったグルメ手帖の写真版は文庫本にはない。グルメ手帖を活字に起こしたものが「小津安二郎東京グルメ案内」にある。本書の主眼は小津作品中の食の場面の分析。「〜案内」は実際に監督が食べた物を求めた、現役の店やおもかげの探訪記。一部重複はあるが、併読を薦める。
秋刀魚の味、豆腐の味 ★★★★★
 小津監督の映画には和食の味がする。若い頃は、ステーキ、豚カツと脂ぎったものやイタリアンなどの洋食をつい食べがちだが、40を過ぎるようになると、秋刀魚にご飯、湯豆腐に熱燗というようなメニューがよくなってくる。シンプルな料理は、素材とだしで味の大半が決まる。

ごまかしはきかない。小津監督には「豆腐屋には豆腐しか作れない」という言葉があるが、これは長年職人として名画を作り上げてきた自負だ。いい俳優といい演出があってこそ「うまい豆腐」はできる。秋刀魚はまさに焼き加減一つだ。一見シンプルな中に深い味のある小津映画を小津監督の食という視点から解説した名著だと思う。巻末のグルメ手帳は注目。