最終戦争論 (中公文庫BIBLIO20世紀)
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石原莞爾は「満州国」建国の立役者であり、昭和期陸軍の一方の雄であったが、東条英機と対立し、太平洋戦争開戦時には予備役に追いやられていた。本書はその直前、昭和15年5月に行われた講演に若干の追補をしたものである。
石原がここで「最終戦争」と言うのは、この次に行われる「決戦戦争」によって、世の中から戦争がなくなる、という意味である。なぜなら、戦争発達が極限に至るため、次に起こる戦争の勝者がトーナメントにたとえれば最終的な勝者となり、兵器の発達によって人類はもうとても戦争をすることはできなくなる、ということだ。これは、核の所有により、局地戦はともかく全世界を巻き込む大戦を事実上不可能に近くしている現状を見れば、正鵠を射ている。
しかも、「真の決戦戦争の場合には軍隊などは有利な目標ではなく、最も弱い人々、最も大事な国家の施設が攻撃目標になる」「徹底的な、一発あたると何万人もがペチャンコにやられる大威力のものができねばならない」「破壊兵器は最も新鋭なもの、例えば今日戦争になった次の朝、夜が明けてみると敵国の首都や主要都市は徹底的に破壊されている」などの言葉は、まさにその数年後に起こった原爆投下を予言しているかのようだ。
石原は、最終戦争後、必然の結果として「そして世界はひとつになる」と語っている。しかしそれが良くも悪くも実現していない現在、次に起こりうる最終戦争がいったい何をもたらすのか。不穏な世界情勢に無関心ではいられない。(杉本治人)