市井に生きる人間の人生
★★★★★
この本がどんな本かを解って貰うためには、「ニューヨーク・スケッチブック」の34編の短編と共に、巻末収められている「黄色いハンカチ」と言うたった6ページの物語を読めば良く解ります。
この「黄色いハンカチ」は、日本人なら誰でもが良く知っている「幸福の黄色いハンカチ」と言う高倉健主演の映画の原作です。
山田洋次監督が、この短編からイメージを膨らませて、この映画を作ったのですが、確かに、この短編を読むだけでそうした書かれていない主人公の人生が思い浮かんできます。
この短編集に収められた34編+1編のどの作品を読んでも、同様に主人公の抱えている人生が浮かんできます。
10ページ弱の短編でそこまで表現してしまう作者の実力のほどが窺えます。
どの一編を読んでも、そこには市井に生きる人間の人生が感じ取れる、素晴らしい短編集です。
涙が出るのも恥ずかしくない
★★★★★
懐かしいカバーの文庫本が書店に並んでいたので思わず手にとってしまった。この文庫本の初版は、今から24年前の昭和61年に出されている。単行本はそれからさらに4年前。その文庫本が、同じデザインのカバーで2009年の書店の店頭に並んでいる。違っているのはその腰巻。曰く「山田洋次監督の[幸福の黄色いハンカチ]原作、アメリカでリメイクされ、今年日本で公開!」。
その「黄色いハンカチ」は、本書ではあくまでも「付録」として、掲載されている。ニューヨークを出たとあるバスのなかの出来事が描かれている。
本編はこの際さておき、この「付録」。映画もいいが、文庫本でたかだか6ページのこの「付録」、なかなかいい。映画が公開されることを機会に、この文庫本が再販されたというのは、もっといい。
とっても好きな作品集です
★★☆☆☆
短い短編がいっぱい収められた作品ですが
スケッチブックというタイトルのとおり
ニューヨークに住むいろんな人たちの一瞬のシチュエーションを
さらりとスケッチしたような作品・・
それぞれがとっても短い小品ながら
不思議と読んでいるうちにじわっときてしまいます
ぜひ一度読んでもらいたい本ですね~
佳作短編34+1
★★★★★
映画『幸福の黄色いハンカチ』の原作となった作品がこの文庫の末尾に35番目のお話として収められているのですが、「ああ、そういうお話の本なんだね。」と、軽く納得されてしまうと・・・ それは、ちょっと違うような・・・ たとえば、原作である「黄色いハンカチ」は正味6ページの小編です。たったの6ページなのですが、凝縮度が極めて高い。凝縮度が高いので、それを読んだ時、そこから喚起されるイメージ、時間の中身が、とても広く、深い。 この短編集には、このお話に一歩も引けをとることのない作品が、あと34編収められています。