ずっと以前、本屋で、やはり谷川さんの『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』を見かけたときもそうだった。タイトルに磁力がある。その詩集は、日常性のスキマに流れ込んでくる《やりきれなさ》を会話的文体で綴ったものだった。
この『夜のミッキーマウス』は統一的な形式を持たないが、これまでの諸作品のように生と死、そこから派生する愛や憎しみ、そして性を、あるときは平易に、あるときは意表をつく言葉の新鮮な組み合わせによって顕現させている。(しかし、個人的には、最初の3作、「夜のミッキー・マウス」、「朝のドナルド・ダック」、「詩に吠えかかるプルートー」はピタッとくるイメージが沸き出てこないけれど・・・) もちろん、読み手の心にグサっと突き刺さる詩も多い。「有機物としてのフェミニスト」なんていう詩もある。放送禁止用語を使用した詩もある。
ともあれ、谷川さんの健在ぶりを知らしめる詩集。