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科学・技術の二〇〇年をたどりなおす (やりなおしサイエンス講座)

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: NTT出版
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21世紀の科学のありかたとは ★★★★★
●本書で村上氏は、「科学哲学者はもっと科学の中身を知りなさい」と言っているように思われる。つまり、科学に疎い科学哲学者が振りまわす極端な社会構成主義が科学の実体とかけ離れているため科学者側が強い違和感を抱いていることに注意を促している。

●むしろ本書の白眉は、20世紀後半以降の科学が「好奇心駆動型」から「使命達成型」に重心が動いたこと(P223)によりマートンの考えていた科学者観では収まりきらない状況が生じていることを明確にした点であろう。

●科学研究の活動が社会の中に取り込まれた現代において今後「科学・技術コミュニケーター」の存在がますます重要になるだろうという指摘(P238)で本書が結ばれている点は、まさに慧眼である。
さすがの筆力! ★★★★☆
科学論の啓蒙書を書かせたら右に出る者はいない村上陽一郎の最新作。科学の社会的制度化の起源から説き起こし、物理学史と生物学史を超コンパクトに駆け足にまとめているのに、なんともコクのある実に読ませる内容に仕上がっているあたり、さすがと言うほかありません。熟練の技ですね。

電信に始まる情報化社会の理解を重視し、情報理論の思想のかいつまんだ説明までしてくれる至れり尽くせりにも感謝です。情報の数学的扱いから日常言語やら音楽やらの本質にまで議論が及んでいくあたりも興味深く読ませていただきました。

「科学を外から見る視点」の歴史もまた科学技術の歴史の一部として認識しているんでしょうね。科学史・科学哲学そして科学社会学の起源から、昨今の科学の公共的規制の問題をめぐる諸議論の歴史的展開を追って、古き時代とは大きく変貌した科学の社会的あり方を語ることで締めくくるあたりも実にエレガント。

村上氏独自の見解が縦横に語られているというような類の本では全然なく、ただオーソドクスに科学史と科学論の概説をしているだけですが、筆の運びの鮮やかさに星四つです!五つでないのは、村上氏の科学社会学の解説がマートン止まりなこと。現代科学社会学が構成主義的科学像をフル活用して科学と社会の相克の場面を分析してきている近年の動向くらいまでは書いてほしかったなあ…構成主義の出現とクーンは大きな関係があるわけですし。村上氏は社会構成主義はお好みではないようですね。