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黄金旅風 (小学館文庫)

価格: ¥790
カテゴリ: 文庫
ブランド: 小学館
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『「本屋大賞」事務局(http://www.hontai.jp)』からノミネート作品のPOPが届きました!
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(Copyright© Web本の雑誌 POP王 POP姫)


主人公は長崎 ★★★★★
寛永5年、鎖国直前。舞台は長崎。鎖国前夜の物語だ。
船大将の台湾への航海や、火消組の消化治安活動。禁教令が出た後の仏具座と鋳物師など、様々な町衆の生活が描かれており、主人公が誰だか少なからず戸惑いながら読んだ。
読み進むほど、唐人、高麗人、ポルトガル人、オランダ人など、登場人物はうなぎ上りに増えていく。登場人物は入れ替わり立ち代り長崎の物語を紡ぐ。
言うなれば、主人公は長崎という町そのものである。

強欲な奉行やら、愚鈍な糞侍やらも出てくるし、人の命はとても軽い。
けれども、長崎の町衆たちは活き活きとして、一生懸命に生きている。
その様が恰好よく描かれている。姿かたちではなく、その精神が極めて魅力的なのだ。
海に面して世界に繋がっている、その精神の一番の体現者であるのが、末次平左衛門であろう。
最初は分厚さにためらったが、読めば読むほど引き込まれていった。
処理されずに取りこぼされた伏線があった印象は否めないが、蝶のように儚いけれどもたくましい日々の物語に、美しい夢を見たように心が沸き立った。
これはナシでしょう ★☆☆☆☆
帯の「『本の雑誌』が選ぶ文庫ベストテン第1位」の文字に惹かれて読んでみました。

久しぶりに挫折しそうになった本です。
読了しないことには批判もできないと、「批判を書くために」読み続けた感じ。

単なる状況描写の羅列です。小説というよりも、長〜いあらすじという印象。
他にも指摘している方がいらっしゃいますが、〜だった。〜した。が続く文章は、プロのモノとは思えません。
あと状況や風景、地理的関係などを延々と描写している部分が結構あるのですが、
こまごまと書き込むのと「描写力がある」というのは違います。
退屈で、読みづらい文章です。

そして主人公側の人物は正義感に溢れ、大胆にして繊細、人間的にも素晴らしい。
敵側の人物は徹底的に馬鹿で強欲、やることなすこと悪事ばかり。
小学生向けのヒーロー物のようです。
微力でありながらも最善を尽くす ★★★★★
 時代小説はあまり読まないのですが出星前夜を読んで期待以上に面白かったので本書を購入しました。自分的には『出世前夜』は本作を越えていないと思いました。

 帯の「選びされた粒よりの傑作を読み終えてなお、『黄金旅風』の頂点に揺るぎなし」という文句に偽りなしだと思います。人間が愚かなゆえに破滅していく救いのなさに無常を感じるのもいいのですが、本作の微力であることを認める謙虚さと、最善を尽くし最後まで諦めないポジティブな姿勢に共感しない読者はまれであると思います。絶望の中でさえ、前を見続ける本作のテーマはジャンルを超えて読者の心を掴むものと思いました。

 本作を時代小説という狭いジャンルで手に取らないことは、旬を越えた名作を取りこぼすことになります。本に夢中になりたい人であるなら必読です。
「本宮ひろ志」と見せかけて、「弘兼憲史」の世界 ★★★☆☆
 中世南海貿易冒険譚かと思いきや、外交と長崎を乱す豊後の大名の告発を江戸で行う、陳情物語がメイン。戦後民主主義的人間観を維新の群像に描こうとした司馬、サラリーマン的悲哀を小藩の下級武士に描き込んだ藤沢同様、時代小説というのは常に現代社会のアレゴリーとして描かれるものだ。この小説で延々と描かれる陳情物語は、55年体制下の地方自治の姿そのものであり、城山三郎の官僚小説を読んでいるような気さえする。中央官僚に話を通すタイミングを計る苦労、通したら通したでコントロールが利かず当初の意図を外れた上位下達が行われる現実、等など、この作者は「世間」というものを本当によく知っていると感心させられる。が、普段このせせこましい「世間」で働いている僕にとって、たまに読む大衆小説の中でまで、こんなチマチマした「日常」には追っかけられたくなかったのが正直なところだ。「壮大なスケール」「娯楽巨編」といった言葉が踊る売り文句と内容のギャップが気になる。

 もう一つケチをつけると、アカデミックな歴史研究を念頭に置くなら、江戸時代の社会システムというのは分かっているようで謎だらけである。例えば故・網野善彦によると、「年貢」一つとっても、「年貢が高い」という一揆はあっても、「年貢を無くせ」という一揆は一件も記録が無いという。武士と農民の間の不思議なコンセンサスは、今の時代にイメージされる単なる階級支配を超えたものがあったと推測されているが、こういうよく分かんない関係は地方と江戸幕府の間でもあったようだ。(特にここに描かれているような、初期徳川時代。)現代に生きる我々の想像も及ばない社会が江戸時代だったのであり、そういう現代人の常識の間隙を突くような驚きにこそ僕は「時代小説」のロマンを描いてほしいので、星は渋目につけた。
重い読後感がいい ★★★★★
立て続けに飯嶋和一の著書を読んでいる。これで三冊目だが、とりつかれたように一気に読んでしまった。
今度の舞台は長崎。時は、三代将軍家光の頃。この時代の快男児の話だけど、彼の著作は、単純にその人物の胸のすくような活躍を描くだけではない。どの時代でも、権力の下で苦悩し、民を守ろうとする人間の、特に名の知れた武将ではない人々の悲しみを伝えている。
なんて、重い読後感なんだろう。こんなに考えさせられる時代小説って読んだことなかった。
「過去のあらゆる戦も、結局は既得権にしがみつく連中が、声高に大儀を掲げ、一般民衆を巻き込んで抹殺してきた歴史が繰り返されてきただけのことではないか」
ということばは、深い。