長谷川恒夫と森田勝
★★★★★
長谷常雄が登場します
長谷川恒夫ですね
彼は単独行でアイガー北壁とマッターホルン北壁を冬季に登りました
残るはグランドジョラス北壁です
これを聞きつけた森田勝は単独でグランドジョラスの北壁に取り付きます
!!!
神は無情でした
森田は転落して重傷をおいます
奇跡的に生還しますがグランドジョラスの冬季単独登頂の栄誉は長谷川のものとなりました
長谷川は光
森田は闇
明暗が別れました
傑作
★★★★★
この巻の見所、まずは羽生の手記。読んでいて涙を抑えきれない。
描写力も凄い。岸の幻覚の生々しさは、この作者ならではの稀有なものだろう。
またこの巻では、羽生にとっての運命の人間である長谷との対比が強調される。一見、対照的とさえいえる二人の中に住む同種の情念は、強い磁力となって二人をひきつける。240ページ、深町の空想の中での二人の邂逅のシーンは、それらの全てが凝縮されていて、名場面続きの2巻の中でももっとも印象的な一こまである。光や温度、風や遠くにざわつく表通りの音まで伝わってきそうな、凄い絵である。
傑作であり谷口ジローの代表作の一つである(第2巻)
★★★★★
‘00年から’03年にかけてビジネスジャンプに連載された作品。原作は夢枕獏。谷口ジローが彼の小説をマンガ化するのは「餓狼伝」以来2作目である。
魅力的という言葉だけでは語ることの出来ない登場人物、マロリーのカメラをめぐって繰り広げられる数々のドラマ、精密で迫力のある山々の描写、エベレストに挑み極限の状態に置かれた羽生や深町の表情や姿、全てが圧倒的で読む者を引きつけて離さない。谷口ジローの画力がなければマンガ化は不可能だったろう。この作品での著者の人物(特に羽生)を描く線は近年で一番迫力がある。特に目の迫力は凄い。山に生きる男を描いているのだから当然といえば当然だし、著者が劇画を描いていた頃の線とも異なるのだが、チョット懐かしい気もした。
あまりの面白さに原作の小説も読んでみた。ストーリを知っていても面白い。短い文章で延々と続く臨場感溢れる心理描写は、文章を武器とする(優れた)小説ならではの世界である。絵を武器とするマンガがどうしても敵わない部分である。しかし、山々に描写や極限の状態にある羽生や深町の表情はマンガである。一コマで全てを表現してしまう。この点において小説は(優れた)マンガには敵わない。
マンガも小説も読んだ私の結論は、どちらか読むだけではもったいないということである。両方を読むことでどちらの作品の世界も広がるに違いない。
谷口ジローには、小品も含めて山を舞台とした作品がいくつかある。この作品はその到達点であるばかりではなく、著者を代表する作品の一つである。この作品を読んだ方は、著者の「K」という作品を読んで欲しい。新品での入手は難しいのだが、これも、山でしか生きることの出来ない一人の男を描いた素晴らしい作品である。