メンバーは、元アリス・クーパー・バンドのキップ・ウィンガー(Vo,Ba)とポール・テイラー(Key,Gt)をはじめ、元ディキシー・ドレッグスのロッド・モーゲンステイン(Dr)、バークリー卒でセッションプレーヤーだったレブ・ビーチ(Gt)という凄腕揃い。
全体のサウンドは、ボー・ヒルならではの引き締まった音作りで、暑苦しくならない程度にコーラスやキーボードで隙間を埋めている。基本的にギターリフを中心としたシンプルな楽曲が多いが、随所にテクニカルなフレーズや高度なリズム変化が散りばめられている。
演奏としてまず耳に残るのは、レブのギターリフの素晴らしさである。
カッティングとミュートを上手くブレンドしたプレイで、とにかく歯切れがよくて聞いていて気持ちがいい。
やたらハーモニクスを多用するような下品なプレイはせず、あくまで爽やかで知的な上手さである。特に「Seventeen」は名リフとして今後も語り継がれるだろう。
メロディはキップとポールが担当と思われるが、ギターリフの和声をうまく活かして、最小限の動きで豊かな広がりを出している。つまり、コード進行を熟知した上でのシンプルなラインで、JOURNEYにも似たポップセンスとロックマインドの融合を感じる。その辺の特徴は「Madalaine」や「Hangin On」によく現れている。
また、要所でのキーボードの使い方も素晴らしい。名曲「Headed for a Heartbreak」におけるメインテーマは、ミュートしたギターとのユニゾンという、ありそうで無かった画期的なものだ。
総評として、「音楽職人が作った擬似LAメタル」という印象。一見するとグラム的で、直情的な歌詞や、シンプルなサウンドに騙されるが、よく聞くと、通好みの仕掛けやワザがみっちりと隠されている。
とにかく1stシングルだった名曲「MADALAINE」がやたらカッコ良くって、その後「SEVENTEEN」のPVでキップ・ウィンガーのセクシーな姿を目の当たりにして、すっかり惚れてしまいました。そういえばライヴを観に行った時、女性客は勿論、男性客からも野太い『キップゥ!』という声があがってたのを思い出します。他にもドラマテックな「HUNGRY」や「HEADED FOR A HEARTBREAK」等、一聴しただけでWINGERだとわかる個性的でキャッチーなメロディ溢れる名曲が揃っています。
今となってはスッゲェ甘々な赤面モノの歌詞が微笑ましかったりしますが、それでも「ハイレベルな演奏技術」と「良い曲」と「メンバーの華」の全てを最初から併せ持った稀有なバンドのデビュー作という評価は揺るぎません。