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精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける (シリーズCura)

価格: ¥1,470
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 中央法規出版
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距離感を忘れないからこその優れた仕事 ★★★★★
精神障害者を取り上げた優れた観察映画の監督である著者は、めったなことでは障害者側に落ちることはない人物である。
このテーマを選ぶ原点となっている、学生時代の「燃え尽き」体験への対処がそれを物語っている。

挫折しない人間はいない。違いが出るのは挫折への対処である。
異常を感じて即座に精神科に駆け込み、すぐに全てを放り出して1週間の休養を取り、「燃え尽き」状態を離脱した著者の対応は鮮やかである。

急性の疾患と慢性化した疾患には質的な差異がある。著者は健常者と精神障害者の境に近づいたが、決して境の向こう側には落ちていない。
(著者自身は、健常者と精神障害者の境はない、という意識が強いようだが、それを鵜呑みにするのは受け手の態度としてナイーブ過ぎると思われる。)

しかし、そこで境の向こう側を覗き込み、体験を掘り下げていく感性が、やはり優れた作家の資質なのだろう。(いわゆる「強者」は、それを「見なかったこと」にしているだけのことも多いものだ。)

撮影対象である精神障害者と撮影者である著者自身との区分けははっきりしている。
助手を務めた妻が精神のバランスを崩し、撮影対象である山本医師の診察を受けた際、その場面を映画の素材として利用しようと本気で考えるぐらいである。

しかし、著者の精神障害者への共感は本物である。共感とは、どっぷり感情移入することではない。
著者が精神障害者たちから信頼されるのは、安易に同情して肩を組みに来るのでなく、健常者としての安定性を保ちながら、目をそむけず、礼節を忘れないからだ。

映画も本書も、対象と自己との距離感を忘れない、ハートを備えた実務家ならではの極めて優れた仕事である。
『精神』<本編>の最高のレビュー ★★★★★
...でもやっぱりこれは私だけじゃあなくて、全世界の人が観るわけじゃないですか。
その観た方たちがどういうふうに思うんだろうということを、思われる前に自分が
それを見てどう思うかってことの方が先で、世間は後からついてきてくれればいいわ
みたいな気持ちになって観に行ったんです。
 もしそれでもあなたは悪よって言われたら、それはその人の考え方だから、私はもう
なんにも言えません。 ( P128 第4章「私たちが映画に出た理由」より )

試写会に行こうか悩んだ末に会場にやってきた女性はこう語った。
映画の中で、子どもを死なせてしまった母親であることを語った女性だ。

やはり、この人(たち)は...自分の足で立って、「自分の意思」で決めているのだ。
こういう人(たち)なのだ。

また、
第5章「精神を「治す」ということ」の「 「見かけ上の効率」と「真の効率」 」で、
山本医師と想田監督の対話で語られること...

山本 ...効率に関しては本当に凄い。
   しかし、それでうまくいく部分も確かにあるんですけれども、心の病の人、
   一人ひとり全体を見ようと思うと、やっぱりいけない。
想田 逆に効率が悪いということですかね。患者さんを管理するのにはいいかもしれ
   ないけれど、病気を治すとか、...、人間性を回復していくとか、...という
   意味では、効率が悪いのでは。
.....
想田 ...当事者を管理するのではなく、病棟を開いて皆さんに主体性をもって
   もらったほうが、よほど効率的だったということですよね。
                  
ここでいう「皆さん」とは、治療にあたる医療スタッフ と 治療を受ける側の双方の
こと。 この双方が、「主体性」をもつ ということなのだ。

医療スタッフと患者の、(人間としての)対等さ。
<ともに>もつべき「主体性」。
ここにも、強烈なメッセージがある。

そして、
監督が貫いた「モザイクをかけない」こと、の効果。
意図していたこと と できあがってから、作品が教えてくれたこと。
「責任を引き受けること」の意味?意義?
この本は、それを語っている。


やはり、DVDでは特典映像として収められているこの本の内容は、
『精神』<本編>の最高のレビューになっています。

できることならば、
まずDVDをご覧になって、自分が感じたことをじっくりと味わってから、
この本を手にされるのがよいかと思います。

山本イズムの大展開 ★★★★★
私は 「山本昌知氏の一番弟子」として自認。それが誇りである。
ドキュメントは 多くの人から聞かせてもらった。私は観ていない。
どうして かような本を出さざるを得なかったのかが関心。
内容は 私の知っている人ばっかり。
山本昌知は私の恩師。師匠。
この書に述べられていることは 私にとって生々しい。
ここまで 拡がらせた人は 山本先生の息子夫婦。
山本先生の言葉は 鋭くなっている。
鮮明と言うべきか。
一言。
山本先生は、人から頼まれたら断れない性分。
「承知した」といつも言っていた。
「山本マサトモ」=「山本ショウチ」であった。
そして、具体的に日本の精神医療を変えつづけ、仲間をひろがらせ、弟子を育てつづけた。
こんなすばらしい医師はいない。
同時に 父の存在を認め 運動を展開している 息子夫婦の 戦略に感動する。
ありがとう。
岡山に 山本イズムあり。そして 影響をうけつづけた者たち、弟子達が拡がらしているさいちゅう。
偉大な 日本改革の戦略家は 先生か 息子か。
考え込んでしまった。