ユークリッドスタイルで書かれたこの本は、歴史的制約の下にあってさえなお、輝きを放っている。スピノザは無神論のかどで攻撃されているけれども、もっともだ。スピノザの神は人格神ではない。また、アニミズムのようなものでもない。それがどのようなものであるかはよくわからない。この本は文学的関心で読むと、はっきり言って極めてつまらない。その点も踏まえて、私は、この本に対する二つのアプローチを提示してみたい。
まず一つ目に、非歴史的考察。これはスピノザを現代哲学として読む試みである。
そして、二つ目に、数学の歴史、政治状況、ユダヤ哲学の伝統などを踏まえながら、読む、という歴史的考察の試みである。
前者はすぐにでも始められるし、後者は時間がかかるものの、得られるものもまた大きいだろう。
この二つを折り合わせたときに、この本一冊から得られるものは、非常に大きいと私は考える。それが何かは、読む人それぞれによると思う。