フェンダー・ローズが歌ってる!
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フェンダー・ローズといえば、ウーリッツアーと共に、エレピ(エレクトリックピアノ)の代名詞です。フェンダー・ローズは柔らかく、ウーリッツアーは硬めの音色で慣れれば聴き分けができます。
どちらかと言えば、フェンダー・ローズの方がメジャーですね。特にジャズ・ミュージシャンにはフェンダー・ローズ派が多いようです。ビル・エバンスが好んだ事もあって、普通はクールな印象の楽器なのですが、ジョアン・ドナートが弾くと違います。珍しくフェンダー・ローズが飛び跳ねながら歌っているようです。いつもはクールな人が酒飲んで羽目を外しているようです。そんな一面を見て、2度惚れしそうです。
独特のグルーブ感とも呼ばれますが、何も考えなくても楽しめます。楽しげなフェンダー・ローズと気の抜けたボーカルが妙にマッチしています。音楽性か、見た目のせいなのか、アントニオ・カルロス・ジョビン等のようにボサノバの巨人扱いはされないのですが、ジョアン・ドナートは只者ではありません。
独特の弾力
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ジョアン・ドナートが40歳を目前にして、初めて歌った記念すべきアルバム(1973年作)。
僕はこのアルバムほど、のんびりしているのに、弾力のあるグルーヴを感じられるアルバムを他に知らないというくらい、聴くたびに、このアルバムには特異な魅力を感じてきた。そもそも歌に対して、決して自信があったわけではないドナートが、きちんと自分の歌の資質を理解し、朴訥としながらもまるで1つの楽器としてうまく作品の中に溶け込ませているのが大きい。ピアニストしての演奏はかなり正確なものでありながら、機械的なうまさとは対極にあるような丸みのあるサウンドだ。それでいて、和み系に終わらない緊張感もあり、音楽全体がまるでスーパーボールみたいに跳ねている感じがする。なかなか表現するのが難しいが、とにかくここにしかない特別のグルーヴ感覚があるのは確かだということを伝えたい。もちろん、ぎゅっと胸を締め付けられるようなブラジル特有のサウダージ感覚も相当高く、いつまでも輝き続けているアルバムである。
ドナートのボサ
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もう、素晴らしいの一言に尽きます。ドナートやセルメンなどの音楽家こそアーティストって呼び方にふさわしい。バッド ドナートでのファンクな音にも感動しましたが、このアルバムではボサを完璧にこなす…マイリマシタ。強いて言えば、もう少し長めのソロにしてもらえれば、って贅沢言ってますが。宝になるアルバムだと思います。
ボサノバの完成形がここにある。
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1958年にジョアンジルベルトの「シェガ・ヂ・サウダージ」が、ボサノバの誕生であったなら、この天才ジョアン・ドナートの「ケン・エ・ケン」は、まさにボサノバの完成形ではなかろうか。このアルバムで、初めて自らマイクに向かい力の抜けた、それでいて繊細な歌いっぷり、そして、彼の魅力はなんといっても彼独特のグルーブ感のあるキーボードにあるのです。力の抜けた、でもなんか優雅な気分にさせてくれる不思議な魅力は、絶品。発表から約30年近くたった今でも、古さや、時代の違いを感じさせないおしゃれなサウンドは、彼の完全主義な部分から生まれる完成度の高さから来てるのではないでしょうか。秀逸なボサノバをお探しの方は是非!!一つもっててそんのない1枚です。