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溥儀―清朝最後の皇帝

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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溥儀の実像 ★★★★★
 2006年は愛新覚羅溥儀(ラストエンペラー)の生誕100年、この年に刊行された本格的な「溥儀(1906-1967)」論です。
 かつて、皇后であった婉容の視点から書いた『我が名はエリザベス』、側女であった李玉琴の生涯を綴った『李玉琴伝奇』を、また関東軍参謀吉岡安直の関係を描いた『貴妃は毒殺されたか』を執筆した著者ならではの、重厚な「溥儀」に関する書物です。
 わずか3歳で宣統帝として即位(1908年)、7歳で清朝崩壊とともに廃帝(1912年)。亡命者として清朝の復辟を担わされた溥儀。辛亥革命後の張勲の復辟によって二度目の即位(1912年)、英国人の英語教師ジョンストンを通じ西欧への憧れをもちつつその夢を断念、その後満州国の傀儡の皇帝となり(1932年)、日本皇室との同化の証に天照大神を祖神として祀る。東京裁判での奇妙な言動(1946年)。数度の結婚の失敗。戦後、ソ連に抑留され戦犯管理所で「人間改造を迫られ」た後、特赦(1959年)。一公民として『我が前半生』出版(1964年)、北京植物園で軽労働。文化大革命のなかでの闘病生活、1967年、腎臓癌、尿毒症、貧血性心臓病で死去。享年62。
 著者は「あとがき」で書いています、「彼の生涯は、清朝最後の皇帝として、祖業を復活する『復辟』を担わされた一人と、その宿命から逃れて此処ではないどこかへ、自分ではない誰かになりたいというもう一人が見え隠れする。・・・溥儀が生涯にわたって求めた父なるものにたいする評価や言動が、その時々に彼の置かれた政治的立場によって極端から極端へ躊躇なく変貌するのも、おそらく少年の日に、二つの人格をそのまま内に抱えこんでしまうことで楽に生きることを知った永遠の少年である溥儀の溥儀たるゆえんと思う」と(p.238)。 
エピソード集 ★★★☆☆
溥儀の自伝『わが半生』の共同執筆者(ゴーストライター)李文達が利用できなかった日本側の史料と、溥儀の周りの親族、関係者の証言を元につづった溥儀の生涯。これまであまり知られていなかった興味深いエピソードをふんだんに紹介している。

ただ、本書は『わが半生』やこれまでの定説を新史料、新証言で補うという姿勢で書かれているので、溥儀や満洲国に関する予備知識がなければわかりづらい点が多い。
したがって、溥儀の生涯についてあまり詳しくない方は、まず『わが半生』や中国近現代史に関する概説書を先に読んでからにしたほうがいいだろう。

あと、他のレビュアーの方も指摘されているが、文章がやや論理性を欠いており、読みづらい。
出版の意味 ★★☆☆☆
新たな資料に基づき、溥儀の隠れた部分を明らかにしようとした意欲は理解できる。しかし、そもそもなぜ今、溥儀なのか、溥儀から何を学ぶべきか、溥儀の人生が現在どういう意味を有しているのかなどがわからない。満州国とはなんだったのか、などについての言及も(最近の類書と比べて明らかに)足りない。数奇な人生をエピソードと共に「文学」的に取り上げたのだという反撃もあるかもしれないが、「新書」というものが一応学問の入り口であることからすれば、失格一歩手前である。また、文も論理的ではなく、長ったらしくて読みづらい。
最低の文章力 ★☆☆☆☆
内容は知らなかった溥儀のエピソードが多くおもしろかったが、とにかく文章力が稚拙。とても岩波書店の本とは思えないような校正。溥儀生誕100年記念になんとか間に合わそうとする焦りからか。