内容が基礎編とかぶるところも多々あるが、4五角問題は基礎編よりもさらに詳しく書かれてある。 あと、いきなり端の位取りをする指し方など、かなり最近指されるような手の紹介もあり面白い。 また、ゴキゲン編については鈴木大介の将棋中飛車編と一緒に読むとより良いと思う。 解説は基礎編と同じくわかりやすい。 ただ実践で試すと書いてある通りにはいかないので、あくまで中盤以降は参考程度だとおもう。

角交換振り飛車は将棋の常識を覆した
居飛車の飛車先は角で受けるものと誰もが思っていた
しかし実際は受けなくてよかったのだ
我々は認識を改めなくてはならない
そして漕ぎ出そう
角交換振り飛車と言う大海へ

まず　衝撃である。鈴木氏の研究には、また　石田流の新手にも頭下がる　知ったから指せるものでもないが　己の腕力不足を　知っただけであった。こんな振り飛車指せないし　指してこられたら　勘弁してよ　そして　即投了だ。

角交換振り飛車という今話題の戦法をかなり詳しく扱っており、
ゴキゲン中飛車からの変化、端歩突き越しという他書では
あまり触れてくれてない戦法に踏み込んでくれているという点ではかなり好感が持てます。
自身の実戦譜で実際の指し方を見せてくれる章も非常に勉強になります。

角交換振り飛車で頻出の４五角や３枚換え定跡の乱戦もかなり詳しく記述されているのですが、
氏の本の悪い癖といいますか、一方的に振り飛車有利の変化にさせたり、
「これにて有利」と言われる場面では本当に有利かどうかすらあやしい場面が多々あります。

当方棋力は３段程度ですが、結果図で振り飛車有利としている局面で、
むしろ居飛車を持ちたいと思えるような場面が少なからずありますし、
居飛車の手順が不自然すぎる箇所もかなりあります。
わざわざ向かい飛車に振った相手に８五歩を決めたり、
居飛車はまだ玉の囲いが不完全なのに、玉を囲い終えた振り飛車相手に
自分から仕掛けたり…と定跡書としてそれはどうか、と思う箇所が多いです。

こういったことは実際に指してみないと気づかないことも多く、
本を読んだからといって満足せずに、実戦でいろいろ試して
はじめて意味を持つ本だと思います。

角交換振り飛車の基礎編に続いて、端歩突きこし戦法、ゴキゲン中飛車から角交換中飛車への戦い方と
実戦例を解説しています。

従来の浅川書房の本は、次の一手形式で丁寧に狙いを教えるパターンかそれとも公平に難解な
研究をそのまま解説しているパターンでしたが　鈴木8段の本は、前作に続いてちょっと
違います。あまりにもうまく行き過ぎる感じもします。

解説は、他書にない変化が満載で見所は十分あります。3枚換え定跡なんかは、ホントにいいのかと
思ってしまいます。
なお解説では、結構相手の攻めを引き付けての解説が多いので周辺を再確認しておかないと
いっぺんに負けてしまうのも多々あります。

前作にあった各章の最後のチェックポイントの問題局面はなくなっていますが
文章でまとめとして載っています。
形勢判断で、これで振り飛車よしと解説されている局面でもそんなにはっきり断言できる
局面でないものもあります。

実戦例では、深浦王位相手に基礎編で解説したとおり負かしているのさすがです。
あと渡辺竜王や序盤巧者の先崎8段他一流どころを相手に見せる実戦例は、興味深いものも
ありますが、序盤の失敗例は、皆無ですのですべてプラス思考解説です。

ただ旬の戦法を非常にわかりやすく狙いを解説している本としては、見逃せない
1冊でしょう。