金田一はもう飽きた
★★☆☆☆
どうでもいいネタが多すぎる。
金田一のプライベートな生活を探る論考が半分を占めているが、映画などの影響もあり、金田一に無味無臭の風来坊のイメージを持っている人は、多いと思う。
そういったイメージから、金田一のプライベートな生活にはあまり触れず、謎のままでいいと思う。
金田一に事務所を持たせたことに横溝正史も後悔していたようだし。
こんなどうでもいいことにページを割くくらいなら、他の人のレビューにもあるとおり、もっと埋もれた資料を掘り起こし、読者を絞りこむべきだと思う。
角川文庫を読んでわかることをわざわざ論じても、なんの新鮮味もない。 金田一研究はいろいろあってウンザリしている。 「金田一研究」ではなく「横溝正史研究」なのだから、もっと他にも手を広げて欲しい。
創刊号がこのレベルだと、次が出せるか疑問である。
ただ、片岡千恵蔵が金田一を演じた「三本指の男」(原作「本陣殺人事件」)についてこれだけ詳しく語られているのは珍しい。
あとは、自由投稿が多く寄せられ、盛り上がることを期待する。
「横溝正史探偵小説選」にも漏れた 「南海囚人塔」 「探偵小僧」「しらぬ火秘帖」(中絶作)「女怪」(中絶作)「模造殺人事件」(中絶作)などが収録された別冊や増刊号が刊行されることを望む。
もっと資料性の濃さとセンスが欲しい
★★☆☆☆
創刊号である本書の内容は、次のとおり。
1■金田一耕助の変遷
2■古谷一行インタビュー
3■論考 金田一耕助の恋愛・食生活・アメリカ・探索・金銭感覚・探偵事務所・パトロン・語り手・戦争体験・探偵方法
4■鼎談・見てから読む横溝正史
5■横溝正史旧蔵資料紹介
6■横溝正史年譜事典
7■自由寄稿
8■横溝正史ネットワーク
3■はホームズ研究本に見られる手法だし、5■6■などなかなか興味深いのだが・・・秋田分科会の同人誌程には満足感が得られなかった。映像はあくまで正典の副産物であり2■4■のような事は他の企画でやった方が良いと私は思う。巻頭の杉本一文カバー絵頁にしろ、本書を買うような人は角川文庫を殆ど所有し見慣れているのだから今更という感じ。初出誌挿絵を配置しているのは○。次号以降でより多くのレアな挿絵大特集が見たい。
専門的な事だがレイアウトの見せ方とか編集の手法が幼いのかもしれない。(西田政治写真キャプション、明治→昭和の間違いじゃないかな)二松学舎大は正史に関してまだまだビギナーなのだから裏方に回ってプロに旗振りをまかせた方がいい。まだ1冊目でもあるし見方が少し厳しすぎたかもしれないが、期待している事に変わりはないので巻を重ね一層の充実を望む。
なお投稿採用者には収録号の進呈と原稿料がでるそうなので、我こそはという方は一筆如何?