気負いの巴投げ
★★★☆☆
「あのマヤ文明を自分のこの目で見るんだから、何かすごいインスピレーションがわいてくるはず」という期待を持って書き始めた紀行文だが、そんな何かが降ってくることもなく、旅が終わろうとして愕然とする、というようなくだりが正直に書かれていて、今まで彼女の作品をずっと読んできた者としては、その気持ちがすごくわかるような気がした。その結果、おもわせぶりな短編がほんの少し添えられている以外には、ごく普通の紀行文ではあるのだが、恩田ファンには彼女の「日常」が伝わってきて楽しく読めた。