心のバランス
★★★☆☆
一般的に“表と裏”があると良い、ないと悪いという世間のイメージがあると思います。実際わたしもそのイメージを持っていて、自分のそういう部分に気づいて自己嫌悪することがあったりと、なるべく“表と裏”をなくそうと意識していました。そのような考えの中この本を読みました。
ジーキル博士は自分の中に異なる性格(ここでは善と悪)が同居しているのを認め、そのことが許せません。そこでジーキル博士は薬により悪の人格であるハイドと言うキャラクターになることができるようになります。つまり性格一つずつを特化させることで全体のパフォーマンスを向上させようとするわけです。しかしジーキル博士はそれまでの固有の心のバランスが崩れていき、最後にはハイドという裏の性格に飲み込まれてしまいます。たとえ裏となる性格でも心のバランスのためには必要なのかもしれません。
人はみんな仮面をつけて生きている
★★★☆☆
「人はみんな仮面をつけて生きている」
この仮面をメタファーと読むか,精神の同意語と読むか。
精神をいじれば,肉体は変わるというのは,どんな人でも経験則で知っていることなので、
自分の心の奥底には,何か邪悪なものがあるなどと思ったりするのだが、
心の奥なんてものは結局覗けないのである。
しかも、これはおはなしだからおもしろいのである。
ストーリーだけなぞると動してこんなに薄っぺらになってしまうのだろう。
同じスティーブンソンなら私は『寶島』の方がずっと好きである、
なんで表紙でネタばれするのか……。
★★★★☆
表紙にわざわざネタばれを記す理由が分からない。
有名作品だったら安易にネタばれして良い、という理屈はあるまい。
という訳で、未読の方でこれから本書を読もうとしている方は表紙を読み飛ばすこと。
内容は申し分ない。
最後のジーキルの告白を読むに及んでは感嘆した。
二重人格の代名詞
★★★★☆
ジキルとハイドと言えば二重人格の代名詞。
この本は内面から異形の怪人を解き放ってしまう怪奇小説だが、ジキル博士に悪を解き放ったことに関する後悔は感じられない。
ハイドに乗っ取られ自身が消えてしまうことにだけジキル博士は恐れを抱いているように強く感じられる。
完全に善と悪に別れる話より、徐々に自分が失われていく恐怖を書いたスティーブンはうまいなぁと思う。
二重人格ものの古典として読んでおいて損はない。短いし。
チープ
★★☆☆☆
まんがで読破シリーズは膨大な原作をうまく省略し、おいしいところだけを読ませてくれるところが利点だと思う。しかし本作はあまりにも奇妙な改変を行っており、ストーリーの雰囲気がチープになってしまっている。原作はホラー小説に近いが、こちらはどちらかというとB級のSFマンガといったところか。