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潤一郎訳 源氏物語 (巻2) (中公文庫 (た30-20))

価格: ¥960
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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谷崎源氏の語り口。 ★★★★★
谷崎源氏はいかにも女官が読者に語りかけるように書かれているところに大きな特徴があると思います。谷崎は語学的文法的なバックアップは専門家に任せて、自分はある程度自由に日本語を崩しています。つまり、書き言葉以上に話し言葉なら、文法にこだわる必要が少ない事を谷崎はよく知っていました。谷崎の文体は非常に音楽的なので、文法に拘ると作家の理想である流麗な文体が実現しないからなんです。また同時に、話し言葉の日本語の場合、この源氏に限らず、シチュエーションに大きく左右される言葉であるため、尊敬語謙譲語の使い分けが文体の大きな特徴となって来ます。つまり読者に向かって、宮廷での自分の立場を常に明確にしなければ人物を描写することもままならない。しかし、こうした自由自在の尊敬語謙譲語の用法をみていると、いつのまにかヨーロッパ言語の人称変化を彷彿としている自分を感じます。源氏の日本語は、主語がなくても主体がわかるヨーロッパの古典語に共通する格調高い響きと音調があります。

英語の3人称にSがつくのも、なれてくるとやはり他人には気をつかわなくてはならないので、自分や話し相手とは違った他人?という意識からこうしたSがついてくるような気がしてくる。それと同じで、日本語は上下関係の人間関係が厳格なので、ついこのような尊敬の文法の変化が複雑不可欠になってくる。本当に言葉は言語はニンゲンの気持ち考えを100%表している事実を知る良い実例です。

紫式部の実に繊細で込み入った感情をあらわした文体。彼女の周囲の人間に対する尊敬、憧れ、そして軽視、軽蔑、身分の違い、上のニンゲンに対するへりくだりの感覚が微細に読み取れます。美しいそして明確なニンゲン関係がこの現代語訳には、実に克明正確に移し換えられています。