本書の村松師の舌鋒は正編以上に鋭くなっています。
作家を目指して書き続けているという質問者から、新人賞の一次選考は通過したのだがそのフィードバックをどう受け取って次のステージへ進むべきかという問い合わせがきます。作家になることを、丁寧に順序を追ってゆっくりと階段を上る作業であると勘違いしているかのようなこの質問者に対して、師はこう叱咤するのです。
「作家ってのは非情の世界だよ。
次のステージなんてことじゃないって。
作家になりたいんだろ。
そんなものは大股でまたぎ越せ。」
こんな風にまさに非情ともいえるような回答があちこちに見られ、「僕はどうしたらよいのでしょう」と迷える子羊然とした質問者の多くが鞭打たれていきます。
巻末インタビューで、師がいみじくも指摘しているように、今の世の中は「短期清算モード」。何年も先に成果が出るような企ては歯牙にもかけず、もっと目先の取り組みで結果を出すことを競っています。
翻ってみると質問者の多くもなにかしら即効力のある回答を求めるばかりで、自分自身の視野と筆力をじっくりと育てていこうという気構えがないように思えてなりません。
いつの日か、師の薫陶を受けて花開いたこれら質問者の文章にどこかで出会えることを楽しみにしています。