近頃は「国際経営」あるいは「国際経営論」に関する「学術書」への批評として、「借用学説の受け売り」や「机上の空論」との、非常に手厳しい内容のものが多い。確かに、実務に携わった人たちからすれば、そこには何ら得るものなど無いと感じるのかも知れない。では、長きに渡る海外勤務を経た著者陣による本書は、どうであろうか。私個人としては、とても興味深く読めた部分もあったし、また有益な情報もあったと感じている。しかし、本書の内容はきっと陳腐化が激しく、またアド・ホックな情報を多く含んでいる、とも感じた。何よりも、著者が経験から得たとする「教訓」も、そのほとんどが既に経済学や経営学等で理論化されているものばかりであるのに、そのことが全く本書では触れられていないことに唖然とさせられた。本当に「経営学者」より「経営実務家」が執筆した「国際経営論」の方が有益なのか？本書の内容とは別に、この問いへの答え探しが今、私の頭の中を占領している。