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MOT 産学連携と技術経営 (MOTテキスト・シリーズ)

価格: ¥3,780
カテゴリ: 単行本
ブランド: 丸善
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産学連携の現状を体系的に整理 ★★★★☆
 本書は、いろいろな執筆者が産学連携について書いた文章をまとめたものだ。各章は普遍性を持たせるためか、概念的な説明文が多い。これを補足するために、最後に「ケーススタディー」が11本付いている。これが面白い。数ページと短くて歯切れのいい内容になっているからだ。読後、このケーススタディーをもう少し本文に盛り込めたら、もっと優れた教科書になっただろうと感じた。

 本書の特徴は、全体に経済産業省の施策礼賛の個所が多く、この分を差し引いて読む作業が必要になる。執筆者陣は産学官連携の実務者である点に異論はないが、人選にやや偏りがあると感じた。各省庁に支援されている立場の執筆者が多いからだ。

 第1章の「いまなぜ産学連携か」は、かなり重い内容に真正面から取り組んだ力作だ。執筆者の持論を再展開し、大学が産み出す知識が産業振興の源泉になると主張する。いろいろ考えさせる。例えば、「シリコンバレーが産学連携の成功モデル」になるかどうかは議論の余地が多い。米国はIT産業興しでは成功したが、他の分野では成功したのだろうか。米国の新産業振興はIT産業以外に参考になるのだろうかと、議論はつきない。

 この部分をさらに深めるのが、第4章の「シリコーンバレーモデル」である。世界に広がるシリコーンバレーモデルは、優れた研究大学を核にIT産業興しに励む各国の動きを解説する。本書は、MOT(技術経営)による産業振興の仕方を探るはずだったが、いつの間にか、IT産業振興論に収束している。この執筆者が書いた「ケーススタディー1」の大学内キャンパスラボはものすごく面白い。書く目標が明確なので、日立製作所が大学に何を求めているかよく理解できる内容に仕上がっている。

 このケーススタディーを読んでから、第10章の「大企業にとっての産学連携」を読むと、企業が産学連携に望むことがよく理解できる。この章も、各省庁の産学連携施策の紹介になっている点を差し引く作業が必要ではあるが。

 本書は、産学連携について現状を整理し、体系化しておくのに大いに役立つ。ただし、編著者が指摘しているように、産学連携は急速に進んでいるので、本書の内容の陳腐化はかなり速く進むだろう。陳腐化しない場合は、日本の産学連携はうまく行っていないことを証明することになるだろう。