ゴキブリだけの本ではありません。ムシに関する面白いこぼれ話満載
★★★★☆
イリノイ大学昆虫学部門主任教授の著者が数々のムシに関する俗説、逸話等について「面白おかしく」専門的な解説、反論、指摘を加えています(専門家らしく著者は昆虫や昆虫以外の「ムシ」についての定義がとても厳格です。素人として一般的な「ムシ」という言葉を使わせていただきます)。訳者後書きにありますが、Earwig's Tail(ハサミムシの尻尾?)の解釈からしてどこまで深読みしてよいのか迷うほど。ハチ、ゴキブリ、クモ、チョウ、蚊など、これでもかという色々な逸話(愉快な話、大袈裟な話、誤解、トリビア話まで)がユーモアに富んだ語り口と、これまた中世の動物寓話風の現代挿絵(これはなかなかの出来映えで思わず微笑みがこぼれます。作者はジェイ・ホスラー)にのせて満載。取り上げたムシも相当広範囲ですが、話題もインターネット検索や情報に言及しており、さすが著者も訳者も意図した現代風の寓話に出来上がっています。感想としては、著者のハイテンションといいますか、高揚感が凄い。ムシとユーモアの融合を目指した著書とありますが、そこかしこに「どうだこの高品質なユーモアは。傑作で笑えるはず!」というユーモアセンスの押し売り的な部分が見られます(ごめんなさい)。そこがちょっと苦笑というところもあるのですが、取り上げたムシに敬意を表して受け入れるべきでしょう。