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アカデミア・サバイバル―「高学歴ワーキングプア」から抜け出す (中公新書ラクレ)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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大学の問題点を抉り出した作品 ★★★★★
本書は、大学業界を生き残るためのサバイバル本という体裁をとっているが、以下の点で重要な作品である。
(1)大学のほんとうの状況を正確に勇気を持って描写している点。
(2)自己愛に満ちた教員側を一方的に非難するのではなく、その状況を愛情を以て理解しようとしている点。
(3)高学歴ワーキングプアの学生を単なる「被害者」として描くのではなく、そのあり方の問題点を抉り出している点。
(4)自分自身をも安全地帯に置かず、誠実に議論を展開している点。
但し、大学に必要とされいるのが「利他主義」だという考えは受け入れがたい。なぜならそれは著者自身の主張と矛盾しているように感じるからである。
私は、日本社会全体に「自己愛」が蔓延し、その問題を指摘する側が「利他主義」を振り回すことが問題だと考えている。問題は、誰もが「自愛(self love)」を失っている点だと思う。大学院重点化のような愚かな政策に従えば、長期的に見れば大学そのものの存立基盤を脅かすのであるから、もし大学が自分の利益を多少とも冷静に判断できるのであれば、決してやらなかったであろう。目の前のニンジンに飛びついて、取り返しのつかないことをしてしまったのは、「利己主義」のせいであって、「自愛」が足りなかったためである。利他主義は利己主義につける薬にはならない。著者のサバイバル法を一言で言うなら、自分の利益をきちんと考えて行動しよう、ということであり、これは私には「自愛主義」の提唱に見える。
博士ってそんなにバカだったの? ★★★☆☆
過剰博士を、大学院重点化に乗せられた被害者、みたいな表現をしているが、
ほぼ予想通りの状況になっているわけで、アカポスにつきにくい今日の状況
を予想できなかったとすると、よほどの大バカで、そもそもそんな奴に
まともな学問ができるとは思わない。

たしかに能力のない連中がアカポスについていることは厳然たる事実だが、
本書の著者も、被害者だと思い込んでいる博士連中も、同様に能力はないと
思う。公正に採用判定がされたとしても筆者と同調者がアカポスが得られる
とは思えない。
アカデミアの外でサバイバルする気概を ★★★★☆
前著の『高学歴ワーキングプア』では博士の就職問題の惨状を広く知らしめた著者が、次に記したのは博士自身がどのように生き残っていくかというもんだについてであった。
前著が世間に対しての訴えでったのにたいし、今回は博士たちへの訴えであるとも言えるだろう。この両書によって著者の博士の就職問題についての見解を知ることが出来るとも言える。

全5章のうち、4章はアカデミアの世界での生き残り術について重点を置いている。
どこにも書いていないが、確固とした研究成果や実力を前提にしていると思いたい。そうでなければどうしても処世術の域を出ない。この世界から抜け出した人間の一人なのでアカデミア業界の大まかな雰囲気は知っているつもりだし、見せかけだけの公募や崩壊しつつある植民地、落下傘より生え抜きといった著者の述べることは大まかなところで間違っていないと思う。
また、専門外でも出来ることを増やす、ほどほど感や率先して雑用に取り組むこと、一緒にいて気持ちいいと思われる人になるといったことはなにもアカデミアに限らず、どのような業界でも生き残ったり成功したりするために必要な心構えだろう。

ただやはり著者が本当に訴えたいことは第5章にある。
何のために学びを極めたのか、極めた学びはどのように活かしていくのか。
この辺りの認識をしっかりしないと著者が述べるように高学歴者は日本社会から排除されてしまうだろう。極めた学びは利己ではなく、利他のためのものである。自己努力のように見えても多大な税金を投入して育成された博士は社会に貢献しなければならないという首長には強く同意する。重点化以降の博士は厳しい就職状況ということもあろうが、自分ばかりで学びをどう還元していくかという視点が薄いというのが私見である。これでは世間に受け入れられないのは仕方がないのではないか。

博士はどんどんアカデミアの外にでなければならない。アカデミアの外で学びを活かしていかなければならない。短期的には就職問題の解決という博士のサバイバルになろうし、長期的にはアカデミア業界自体のサバイバルにつながる。そのためには自分の研究した分野の専門知識ではなく、研究する過程で培った探求心や研究姿勢といった「魚の釣り方」へ意識を向けて行く末を考えていくことが望ましい。

では著者が向かうのはどこであろうか。
本書での見解から類推していけば著者にはアカデミア業界で生き残るポジションはまず得られない。さらに言えばアカデミア業界の外で学びを活かしていくという方向性が結論づけられていくのではないだろうか。機会があれば著者のその後の活動についても注目していきたい。
〈解決編〉でも〈就職マニュアル〉でもない ★★★★★
前著『高学歴ワーキングプア』以来、この問題は著者の研究テーマの一つとなったらしい。ちゃんと読めば分かると思うのだが、本書の内容は著者の経験談といったレベルではなく、かなり綿密な取材が背景にあるはずだ。

身も蓋もない露悪趣味やシニシズムだと本書の記述が受け取られることも、まあ正直故ないものではない。だが、実際そうなんだから仕方ない。そういう「直視すれば気分が悪くなる現実」を、まずはあえて直視することからしか、この救いがたい現状から一歩を踏み出す道はないのではないか。

この本を読んで大学院に行くことに意義を見出せなくなった大学学部生には、大学院への進学は勧められない。また、ここに書かれているようなことをまったく実践できないでここまで来た博士後期課程の院生やオーバードクターやポスドクやの未来は、ほとんどの場合明るくない。この程度のことを当たり前のように日々実行している者であっても、この業界でのサバイバルに成功するとは限らないからだ。

ここで問われているのは、「これだけ努力したんだから成功させろ」あるいは「成功するにはこれさえすればOK」といった発想そのものだろう。だからこそ、この本は〈解決編〉でも〈就職マニュアル〉でもないと言えるのである。

それでもなお、大学院に進み、アカデミックな世界を志すとすれば、それは何故のことでなければならぬのか。第五章などで著者が四苦八苦しながら喚起しようとしているのは、その点の問い直しではないかと思う。
本当に大学を良くしたいと思うなら ★☆☆☆☆
限られた大学のポスト数に比べて博士の数が多すぎるという事実を考えると、いす取りゲームの如きレントシーキングが繰り広げられることは想像に難くない。
こういうときだからこそ教育への情熱や質の高い研究といった本質に眼を向けないといけないのに、著者が若き博士たちに勧めているのは単なる処世術である。
あぶれた博士を救済することが目的ならノンアカデミックへのキャリアパスを整備するとか建設的な手段がある訳で、既存のそういう試みを一切紹介せず無責任に批判しているだけ。
こんな本に数百円でも費やして時間とお金の無駄だった。