「巨人」同士の歓談を楽しもう
★★★★★
元阪大教授でありかつ劇作家である山崎正和は、「自分が安心して
対談できる相手は丸谷才一と司馬遼太郎だけ」と語っているが、丸谷とは
百回を超える対談を誇っている一方で、司馬との対談はそれほど多くはなく、
その数少ない一つが本書である。丸谷との対談ではあらゆるジャンルに
関する縦横無尽の知識が飛び交うのに対し、ここで語られているのは
比較的抽象的な事柄である。だが、その内容の一つ一つが(丸谷との
対談にも増して)日本文化の深層部分を的確についており、
博覧強記の関西人(関係ないかもしれないが)同士楽しんでいるのが
よくわかる点で興味深いと同時に恐るべき本である。