ぞんびい
★★★★★
この文庫を読むまで、私は「コケカキイキイ」とは、日本語文法の「カ行変格活用」<コ・キ・クル・クル・クレ・コイ>」の亜種だと、ずうっと思っていた。「コ・ケ・カ・キイ・キイ」と語尾が変化するあれ、である。しかし、本当のところは、水木しげるの発掘した<妖怪くん>だったのである。
コケカキイキイは、国に捨てられた老婆、親に捨てられた赤子、飼主に捨てられた猫、そして、食料に見捨てられようとしているシラミ夫婦、この四生物の臨終が期せずして一致したときに誕生した稀有な生「神様」なのだ。
コケカキイキイが、その役目を果たして消えるときの言葉に我々は心を打たれる・・・・
「私は庶民の不満を食べる新生物です。いま私は、庶民の不満を食べ腹いっぱいになったので元に返るのです。あとに満足が残っているはずです・・・・・」
そして、あとに元の四生物の死体が残る。
本書は、1970年代前半の日本の欲望社会を痛烈にこき下ろす<コケカ>様の生き様(?)を描く「コケカキイキイ外伝6編」のほか、1965年から71年までの名作をも含み読み応えがある。