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心はどこにあるのか (サイエンス・マスターズ)

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 草思社
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進化するデネットの考察 ★★★★★
 「心は脳という器官から生み出されるものだ」という一見自明な理論に対して、著者のデネットは「心は脳と同一のもという考え方をひとたび捨て、心の存在を身体の他の部分にも広く広げて考える」ことを提唱している。心身一元論を主張しているものの、ある意味で、心・意識問題において、脳科学と哲学のフロンティアにいたデネットの中でも革新的な主張になっていると思う。
 つまり、脳という一個の器官に由来するのではなく、身体・一個体全体のシステムによって生み出されるものが心ではないかというものである。脳も肝臓や心臓と同じく、ひとつの臓器であることを考えれば、脳だけに特別な重きを置くのは間違っている、システム全体としての働きが意識という活動を生むのだ、という主張は非常に斬新に思えた。
 もちろんこうした考察が科学的な根拠に明確に基づいているか、とか、実験的に可能なパラダイムを提供しうるか、といえば、なかなか難しいといわざるを得ないが、それでもひとつの考え方として一読の価値はある。
 また、本書の後半で特に取り上げられる「グレゴリー型」と筆者が称する「内的に外部の環境をシュミレーションし、その結果を行動に移す前に検討できる能力」を獲得したことがヒトの高度な知性を生み出す結果になったのではないか、という論点は、『考える脳・考えるコンピュータ(ジェフ・ホーキンス著)』に見られる主張とあわせて読んでみると面白いかもしれない。
心の問題のゆくえ ★★☆☆☆
進化論的アプローチに注目して認知哲学、「心」の問題に挑戦している。
デネットが一貫して問題にしているのは
人間はどうして「動物と異なって」心があるのかという点である。
認知科学の知見と、哲学的な考察によって
全てのものに「志向性」があり
多くの動物に「思考」があるが
人間だけに「心」があるということを主張している。

しかし、論理的にはすきだらけと言わざるをえない。
デネットは人間とそれ以外の動物についての
ある種の問題に対する解決能力の差を上げているが
少なくともいくつかの点では最近の霊長類の生態学に
ついての研究成果を無視しているようにも思える。
また仮にそれが問題でなかったとしても
こうした問題解決能力の違いが「心」のありなしを

語る基準となりえるのだろうか。

またこれとは別に哲学的にも問題がある。
つまり、デネットは議論の中で
人間に「心」があることを
自明のものとしてとらえている。
しかし、人間を認識者としてとらえるならば
認識される対象をはじめ
自己言及的に認識される自己の存在も証明することはできない。
他者的に理解される「自己」の概念は

言語哲学の問題であると同時に
現代の認知科学の成果でもあるのだが
デネットはこうした見方を完全に無視しているように思える。

デネットは認知科学と哲学の間の橋渡しについての
啓蒙的な仕事をした人である。
彼自身が理論的な行き詰まりを感じていることを
この本が良く表しているのではないだろうか。